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国際エネルギー機関(IEA)が「2017年世界エネルギー見通し」。2040 年に世界の発電量に占める再エネ電力の比率4割、と予測。エネルギー全体も3割増(RIEF)

2017-11-15 12:21:51

 

  国際エネルギー機関(IEA)は14日、2017年版の世界エネルギー見通し(World Energy Outlook 2017)を発表した。世界のエネルギー需要は2040年までに現行より30%増加するが、供給面では再生可能エネルギーが世界の発電量に占める比率が、現行の24%から40年には40%へ高まると予測した。

 

 世界のエネルギー需要が増大するのは、世界経済が年間3.4%増で成長するほか、2040年までに世界の人口が現行の74億人から90億人以上に増加、さらに都市化の進行などが要因となる。都市への人口集中は1四半期ごとに中国の上海市の人口相当分が増え続けると予測している。

 

IEA1キャプチャ

 

 こうしたエネルギー需要増が今後、もっとも大きい国は、中国に代わってインドになる。インドは世界のエネルギー需要増加分の30%を占め、40年の世界のエネルギー使用比率の11%をインド一国が占める。次いで経済成長の著しい東南アジアのエネルギー需要割合が高まる。東南アジアの需要増のペースは、経済成長が安定し人口の伸びも鈍化する中国の倍になる。アジア地域全体は世界のエネルギー増加分の3分の2を占めるようになる。

 

 こうしたエネルギー需要の増大に対して、供給面で成長が著しいのが再エネ発電。2040年までには世界の発電部門への投資の3分の2を再エネ発電で占めるようになる。その結果、40年の再生エネ発電量は現行16年の2.6倍に成長し、全体の発電に占める再エネ比率は40%に達する。一方、石炭、天然ガス等の化石燃料の比率は現行の65%から50%に、原子力発電は11%から10%にそれぞれ低下する。

 

 再エネ普及が進むのは、中国やインドなどこれまで石炭等の化石燃料発電に頼ってきたエネルギー需要の大きい新興国で、太陽光発電の導入が急増するためだ。報告書は「中国とインドが主導し、太陽光は40年までに最大の低炭素発電源になる」と指摘している。

 

 IEA2キャプチャ

 

  先進国でエネルギー転換が顕著なのはEU。2030年までに再エネ電力が新規発電投資の80%を占めるようになり、かつ再エネの中でも風力発電が主要な電源になる。陸上、洋上の両方の風力発電が、政策支援もあって成長する。政策面ではこれまでの固定価格買取制度(FIT)から入札方式が主流になる。また住宅やコミュニティ、企業などが太陽光等に直接投資の増加で電力部門の転換が進行する。

 

 再エネの普及は電力部門に限らない。再エネによる熱や運輸部門へのエネルギー供給も、世界的に倍増する。たとえばバイオ燃料などの開発が進むブラジルでは、最終エネルギー消費に占める直接、間接の再エネの比率は現行の39%から40年には45%に増加する。世界全体でも9%から16%にアップする。

 

 一方、化石燃料エネルギーの主役だった石炭は、2000年から現行まで900GWの新規発電力を増大させた。しかし、CO2排出やばいじんなどによる健康被害の影響で、今後の増加はエネルギー不足の続く途上国を中心に、現在計画中の400GWにとどまるとみている。インドでも、現行の4分の3から40年には半分以下に低下する見通し。CCS(炭素回収貯留)設備を備えないと、石炭火力は存続できなくなるとみている。

 

IEA3キャプチャ

 

 石油の需要は40年までに引き続き増大する。天然ガスも45%増となる。ただ、発電燃料としての石油・ガス利用は限定的になり、産業利用が主要になる。米国のシェールオイル増産や電気自動車(EV)の普及が世界的に進むと、原油価格は1バレル50~70㌦と低位での均衡に向かうとのシナリオを示している。

 

 原子力の利用は引き続き不確実性が伴う。だが、明確なのは中国の原発利用。積極的に国内で原発建設を進めており、30年までに米国を抜いて世界最大の原発発電国になると推測している。

 

 エネルギー消費が石炭などの化石燃料から再エネ主導に明確にシフトするにもかかわらず、世界のCO2排出量は40年まで引き続き緩やかな増加となる。ただ、昨年の予測に比べると、40年のCO2排出量は6億㌧低く見積もられた。最大のCO2排出国の中國は、2030年までに排出量は9.2G㌧でピークアウトトンするとみている。

https://www.iea.org/weo2017/