HOME8.温暖化・気候変動 |COP23、気候変動による海面上昇などの損失・損害費用対策で、化石燃料産業に直接課税する国際的「気候損害税(CDT)」導入を市民団体等が提唱。汚染者負担原則に基づき(RIEF) |

COP23、気候変動による海面上昇などの損失・損害費用対策で、化石燃料産業に直接課税する国際的「気候損害税(CDT)」導入を市民団体等が提唱。汚染者負担原則に基づき(RIEF)

2017-11-17 11:13:36

Climate 1キャプチャ

 

 ドイツのボンで開いている国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)では、先進国の「緩やかな」対応に対して、気候変動の影響をすでに受けている途上国や島嶼部諸国などの不満が高まっている。その中で、石炭など化石燃料産業に気候変動の損失と損害分を直接課税する国際的な「気候損害税(Climate Damages Tax:CDT)」の導入を求める動きが広がっている。

 

 国際課税のCDT構想には、気候変動の影響をすでに受けている国々や、環境NGOのOxfam、 Greenpeace、 WWF、個人を含めて50以上の国・機関等が賛同している。

 

 同税の構想は、2013年のポーランド・ワルシャワで開いたCOP19で、気候変動対策の回避(Mitigation)、適応(Adaptation)策とは別に、すでに影響を受けている国、地域の損失・損害への対策をとるWarsaw International Mechanism for Loss and Damage (WIM) に合意したことに基づく。

 

 パリ協定でも、WIMは「2℃目標」とは別に位置付けられている。しかし、具体的な損失・損害対策はとられていない。そこで、市民団体や環境NGOなどは、海面上昇や山林火災などの気候変動現象に直接影響を及ぼしている化石燃料産業に、被害額に見合う税を課す国際課税の導入を求めているわけだ。

 

 環境NGOらは、石炭等の化石燃料産業は、CO2などの温室効果ガス排出量の約70%を占めており、温暖化促進の責任を負っている、と指摘している。構想では、石炭だけでなく、天然ガス、石油の全化石燃料産業を課税対象とし、税収は国連が途上国支援の「緑の気候基金(Green Climate Fund)」などの援助資金に一括して配分する仕組みだ。汚染者負担原則に基づいた「国際連帯税」となる。

 

 また化石燃料産業への追加課税による化石燃料の生産費用増は、再生可能エネルギー発電等への切り替え促進効果も生み出す、と期待されている。

 

 CDT構想に署名したセーシェル共和国の気候変動大使のRonny Jumeau氏は「われわれは海面上昇に直面しており、そのための損失・損害をファイナンスする新たな資金源を必要としている。CDTの概念は、規模的にも公平性の観点からも望ましく、実現に向けて推進させたい」と述べている。

 

 環境NGOのClimate Justice ProgrammeのJulie-Anne Richards氏は「COP23での先進国の対応は、気候変動の直撃を受けている貧困国の状況をほとんど考慮しない姿勢だ。CDTはこうした不公正な状況を転換し、汚染者責任に沿った支払いを化石燃料産業に求めるものだ」と意義を強調する。

 

 ただ、支援を受ける側の途上国からはCDTの実現性への疑問の声も出ている。バングラデシュの気候変動担当官の Ziaul Haque氏は「CDTの構想は歓迎するが、先進国が国として気候変動の損害を十分に払おうとしないのに、それらの国に所属する化石燃料企業に損害分をどうやって課税できるのか」と指摘、課税権を持つ先進国の対応に疑問を向けている。

 

 化石燃料産業への温暖化対策税の課税は、日本でも検討中。ただ、税収は国内の温暖化対策を中心に配分する方向で、国際的な支援を最優先するCDTとは異なる。仮にCDTが導入されると、石炭火力発電への依存度が高く、新規建設も容認している日本では、課税対象の企業が増加することが見込まれる。

 

https://www.stampoutpoverty.org/about-us/climate-damages-tax-declaration/

http://www.climatechangenews.com/2017/11/16/call-polluters-pay-climate-damages-tax/