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三菱マテリアル、子会社の三菱電線のデータ改竄、2月に把握。ESG優良企業としてMSCIの2つのESG指数に組み入れ。ESG評価の妥当性に疑念(RIEF)

2017-11-24 15:28:24

MSCIキャプチャ

 

  子会社の製品の品質データ改竄が発覚した三菱マテリアルは、企業の社会的責任(CSR)として「安全優先」「法令遵守」等を、行動規範でうたっている。これまでも、日本企業の中ではESG関連の評価は高く、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が今夏採用した日本株のESG指数のうち、同社の株は、MSCIの2つの指数に採用されている。MSCIの指数には先に偽造が発覚した神戸製鋼も対象となっており、ESG評価の妥当性が問われる形でもある。

 

 三菱マテリアルの子会社の三菱電線の製品データ改竄は、配管を密封して内部を保護するシール材の寸法や材料物性の測定値をのデータ等を書き換えていたというもの。同じく子会社の三菱伸銅は車載端子に使用する黄銅条の測定値を書き換え、顧客の規格に合わせていた。

 

 三菱電線のケースは、神戸製鋼のデータ改竄問題の発覚以前の昨年12月のマテリアルによる品質監査に伴う電線の社会監査の結果、今年2月には不適切な行為があったことを把握し、親会社のマテリアルにも報告されていたという。三菱伸銅は今年10月の社会調査で発覚した。 電線の場合、不適合品が出荷された可能性のある顧客企業数は内外229社に上る。伸銅のほうは、29社とされている。

 

三菱マテリアル、竹内章取締役社長
三菱マテリアル、竹内章取締役社長

 

 当初の報道では、10月に発覚した神戸製鋼所によるアルミ・銅製部材のデータ改竄を受けた社内調査で見つかったとされていたが、電線の場合は2月の段階でマテリアルもデータ改竄を把握しており、神戸製鋼事件が発覚しない場合は、公表去れなかった可能性もある。子会社の改ざん問題と同時に、マテリアル自体の法令遵守のあり方が問われることになる。

 

 三菱マテリアルは「CSR」でも「先進企業」を標榜してきた。ESG株投資を推奨する指数各社は、同社をESGに優れた企業として積極的に構成銘柄に組み込んできた。同社が自ら公表している指数だけでも、「Dow Jones Sustainability Indices, Asia Pacific Index」「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」「SNAMサステナビリティ・インデックス」などに採用されている。http://rief-jp.org/ct6/73464

 

 このうち、MSCIの2つの指数は、7月にGPIFが日本株運用のために採用した3つのESG日本株指数のうちの2つ。E(環境)S(社
会)G(ガバナンス)に優れた企業を選りすぐって指数化したという触れ込みで、GPIFに採用されている。

 

 MSCI2キャプチャ

 

 MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数(構成銘柄数251社)で葉、三菱マテリアルは「A」のESG格付け(上から3番目の高い評価)を得ており、組み入れ比率は0.18%。一方のMSCI日本株女性活躍指数(WIN:212社)では、「性別多様性スコア」を5.5と評価され、組み入れ比率0,16%。マテリアルのCSR報告書では、外部識者が第三者意見として、マテリアルがESG指数に選定されたことを「社会が、安全で高品質なマテリアルの供給者として、同社に対する期待が高いことの証左」と高く評価するコメントを付している。

 

 しかし、MSCIの同指数では、神戸製鋼が当初、AAという高い評価で組み入れられ、その後、不祥事発覚で先月、3段階ダウングレードしたが、連続して組み入れ企業の評価の妥当性が問われる格好になった。MSCIの場合、独自の「ESG格付け」を実施して組み入れ企業を選定していると説明しており、格付けの方法論等も開示されている。ただ、企業債券の信用格付けとは異なり、格付け主体自体の信頼性などは担保される仕組みにはなっていない。http://rief-jp.org/ct6/73636

 

 「ESG評価」「ESG格付け」「ESG運用」などと、ESGを冠した投融資評価や調査等が広がっている。だが、ESGの概念自体が、評価会社等によって異なっていたり、評価する人材の能力評価もされていないケースも少なくない。本来は、財務評価では把握しきれない非財務のリスクマネジメントとして捉えられるべき環境や社会的要因、ガバナンスの非財務側面を、投資リターン向上の手段のように扱うこと自体に無理があることに気付くべきだろう。

 

 一方で、”人気指数”を開発したMSCIは、今第三四半期の指数販売の売り上げだけで前年同期比17.0%増と急増。社全体の売り上げの11.7%増に貢献した。ちょっとした“ミニESGバブル”が、起きているのかもしれない。

 

http://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2017/pdf/17-1123.pdf

http://www.mmc.co.jp/corporate/ja/csr/report/pdf/csr2017.pdf