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2016年の記録的高気温、人為的気候変動のみで説明可能。 国際科学者チームが研究成果公表(AFP)

2017-12-15 07:25:47

tenkouキャプチャ

 

 【12月14日 AFP】2016年に記録された、世界平均気温の過去最高値更新、アジアの猛暑、米アラスカ州沖の海水温上昇などの異常事象の原因は、化石燃料の燃焼といった人的活動に起因する地球温暖化の進行以外に説明がつかないとする研究結果が13日、発表された。

 

 査読を経て発表された「Explaining Extreme Events in 2016 from a Climate Perspective(気候の観点から2016年の異常事象を説明する)」と題された報告書によると、国際科学者チームが発表した今回の研究結果では、気候変動がなければ発生しなかったと考えられる異常な天候事象が初めて特定されたという。

 

 人為的な気候変動の関与についてはこれまで、特定の洪水、干ばつ、嵐、熱波などの発生確率を上昇させると考えられていたが、唯一の発生原因ではないと考えられてきた。

 

 今回の報告書が掲載された米気象学会紀要(Bulletin of the American Meteorological Society)のジェフ・ローゼンフェルド(Jeff Rosenfeld)編集長は「この報告書は根本的な変革を示すものだ」と指摘する。

 

 「科学者らの間では長年、人類が異常気象の発生リスクを変化させていることは知られていた。だが、人為的影響がなければそもそも起こり得なかった異常事象が多数特定されたことで、人類が新たな気候を作り出したことによって全く新しい天候を経験するに至っていることを浮き彫りにした」

 

 報告書には5つの大陸と2つの海にわたる異常気象の分析結果27件が取り上げられた。全て査読を経たものだという。

 

 報告書をまとめるに当たり、18か国から計116人の科学者が参加。異常事象二十数件における気候変動の関与を特定するため、過去の観測データとモデルによるシミュレーションを組み合わせて分析した。

 

■相次いだ記録更新

 

 2016年は世界の平均気温が過去最高値を更新し、近現代史上最も暑い年となった。この世界平均表面温度の記録更新は「実質的な100年スケールの人為的温暖化によってのみ可能」だったと、報告書は指摘している。

 

 アジア地域については、3月~5月にインドを襲い580人の犠牲者を出した大規模な熱波など「2016年における地域の猛暑は、気候変動がなければ起こり得なかったと考えられる」と記された。

 

 ベーリング海(Bering Sea)に隣接するアラスカ湾(Gulf of Alaska)やオーストラリア北部沖では、海水温度が人工衛星による観測記録が残る過去35年間で最高値となった。

 

 報告書では、この海水温の上昇で「世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)の大規模な白化現象とアラスカ沖で過去最大規模の有毒藻の大量発生」が引き起こされたことを指摘。「観測された異常事象が自然変動だけで発生したと考えるのはかなり難しい」とした。

 

 報告書ではさらに、2016年に亜北極帯で発生した「ブロブ」と呼ばれる暖水塊についても「人為的な気候温暖化なしでは説明がつかない」ことを明らかにしている。

 

 この他、2015年から2016年にかけて見られたような、アフリカ南部一帯を襲う激しい干ばつの発生件数が、人為的気候変動が主な原因で過去60年間に3倍に増えていることも説明された。また、2016年に中国・武漢(Wuhan)で発生した記録的豪雨のような異常降雨については、その発生確率を1961年当時のものと比較すると、現在の気候では約10倍上昇していることも明らかになった。

 

 ただ、報告書によると、すべての異常気象が地球温暖化の影響を受けているわけではない。

 

 ブラジル北東部で水不足を引き起こした干ばつなど、調査対象の異常気象事象の約20%は人為的気候変動との関連が認められなかった。

 

 今回の研究結果は、米ニューオーリンズで開催の米国地球物理学連合(American Geophysical Union)年次総会で発表された。

 

http://www.afpbb.com/articles/-/3155447