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中国の全国版温室効果ガス排出権取引(C-ETS)開始宣言へ。当面、規制対象は石炭火力発電に絞る(RIEF)

2017-12-19 08:23:01

Chinaキャプチャ

 

  RIEFが先週末に報じたように、中国は19日に全国版の温室効果ガス排出権取引制度(C-ETS)の開始を宣言する。対象産業は、当初は8産業とする予定だったが、当面は発電部門に絞ってスタートするという。国家安定改革委員会(NDRC)が明らかにした。

 

 当初は、石油化学、化学、建材、鉄鋼、非鉄金属、製紙、電力、航空のCO2排出量の多い8部門を対象になるとみられていた。その分、制度としてのスケールダウンするが、火力発電所分野は、中国のCO2排出量の46%を占めており、このうち39%が今回始まるC-ETSでカバーされることになる。制度の対象企業数は約700社、排出総量は約30億㌧と見込まれる。

 

 対象産業が大幅に少なくなったのは、当該産業の統計データに疑義がある、という点が大きいとされる。これまで中国の経済指標については、人為的操作で底上げしていたとの批判があった。ここにきて、そうした問題が現実にあり、今回の新制度発足の実務的な障壁になった形だ。それでもカバーする排出総量ではEUの同制度を上回る。

 

 カーボンクレジットを取引するシステムの信頼性にも一部、課題が残っているという。加えて、除外された各産業界のロビー活動の効果を指摘する向きもある。

 

 先行スタートする電力産業は、排出量がもっとも多いほか、排出量データも整備されているメリットがある。排出権取引のうち、基盤となるカーボンの先渡し取引は、当分、利用できない見込み。そうなると、排出量規制を受ける各企業は、排出量削減の多寡を調整する経済合理的な取引をしばらくは実施できないことになる。

 

 環境保護団体は、ETSがもっとも温室効果ガスの排出量を大幅に削減でき、もっとも低価格が実現できると、新制度の拡大に期待を示している。排出事業者は、排出するCO2㌧ごとに、許可書を得なければならない。規制基準を満たせれば、残りの余剰分は市場で売却して利益を得ることができる。