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オーストラリアで世界初の太陽光発電電力だけで走行する「完全ソーラー列車」運行開始。クリスマスに臨時運行。本格運行は年明け7日から(RIEF)

2017-12-25 00:40:52

Solartrain3キャプチャ

 

  オーストラリアのバイロンベイ鉄道(Byron Bay Railroad)は、太陽光発電の電力だけで走行する電車の運行を12月16日に臨時のクリスマス運行を開始した。走行距離は3kmと短いが、晴天時は列車の屋根に設置した太陽光パネルでの電力だけで、曇天や雨天時は、駅舎で蓄電した太陽光電力を充電して走る。「完全ソーラー列車」は、世界で初めて。

 

 「完全ソーラー列車」が運航したバイロンベイはオーストラリアのニューサウスウェールズ(NSW)州の東海岸にある最東端の街。シドニーから北方に約770km、NSWのブリスベンの南方約170kmに位置する。昔からサーフィンなどが楽しめるリゾート地として知られる。

 

 NSW州の海岸沿いの総距離132kmの鉄道が2004年5月に閉鎖されたが、今回、そのうちバイロンベイ周辺区間を今回、「ソーラー列車」区間として復活させた。今回はクリスマス期間の臨時開業で、正式には2018年1月7日から運行する。「North Beach」「Byron Beach」の間を一時間に1本ずつ8往復する。

 

 

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 列車は定員100人で、片道3㌦。運行する列車は、1949年にシドニーで製造された「600 class」と呼ぶディーゼル列車を修復。車両の屋根に屋根上に合計6.5kWの太陽光パネルを貼り付け、77kWhのリチウムイオン蓄電池システムも装備している。日射量の多い地域なので、晴天時ならば、この車両の太陽光パネルだけで4~5回の往復運行が可能という。

 

車両の屋根に太陽光パネルを張り付ける様子
車両の屋根に太陽光パネルを張り付ける様子

 

 また駅は2つだけだが、いずれの駅舎にも30kWの太陽光パネルを設置している。日射条件の悪い場合には、停車中に駅舎で発電・蓄電した電力を列車に充電して走行電力を補う仕組みだ。

 

 車両には、それまで2基搭載していたディーゼルエンジンの1基だけを残している。車両の重量バランスを取るためと、電気系統が故障した場合の万一のバックアップ用。ただし、通常は列車と駅舎の太陽光電力だけで十分な電力が得られるので、ディーゼルエンジンの出番はない、という。「完全ソーラー列車」の総費用は、約400万㌦。

 

 元になるディーゼル列車は、当時、時速100km以上で走行できた。しかし、ソーラー列車は乗客や観光客に、オーストラリアの海岸沿いの景色を楽しんでもらうため、時速25kmの低速走行で、3kmの区間を走る。

solartrain1キャプチャ

 日本の東京ー名古屋で新たに計画中のリニアリニア中央新幹線が285.6kmを時速505kmで走行するのとは、比べ物にならない低速スピードだ。だが、工事談合が発覚し、巨額の国費で支えられるリニア新幹線に比べて、バイロンベイ鉄道の場合は、政府資金に頼らず民間の資金だけで運営され、談合入札もない。何よりも自然を壊さず、自然に沿った鉄道であるという魅力がある。

 太陽光パネルを列車の屋根に設置した鉄道としては、2017年7月にインドの首都デリーで、インド鉄道の運行によって開始している事例がある。ただ、インドの場合は、発電した太陽光電力は主に列車内の照明や扇風機、室内表示の電力源などに使われ、列車そのものを駆動させる力はない。http://rief-jp.org/ct4/71450

 バイロンベイ鉄道の開発責任者のJeremy Holmes氏は「われわれは国中を探してビンテージ車両を手に入れ、修復と太陽光パネル・蓄電設備設置の新規改修を実施した。列車は46億年もの間、地球を照らし続けてきた太陽の力で息を吹き返した」と胸を張っている。同地は、日本からのエコツーリズムの有力な候補地の一つになりそうだ。

http://byronbaytrain.com.au/