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ドイツが2020年の温室効果ガス削減目標を先送りか。連立交渉で有力に。雇用対策を重視(RIEF)

2018-01-12 11:21:57

merkelキャプチャ

 

   ドイツのメルケル首相が進めている大連立政権の樹立交渉で、これまでドイツが公約していた温室効果ガスを2020年までに40%削減(1990年比)する目標を、先送りする可能性が高まった。ドイツ経済の堅調さなどから目標達成には追加的な対策が必要で、そうした削減策が雇用に影響するとの判断による。ただ、仮に目標を先送りすると、グローバルな温暖化対策でのリーダーシップが低下するだけでなく、その先のパリ協定順守にも影響が及ぶ可能性もある。

 

写真は、連立交渉の協議で握手するメルケル首相㊧と、SPDのシュルツ党首)

 

 メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)、は昨年9月の総選挙で敗北。第一党の座は維持したものの、大幅に議席を減らした。このため首相は、安定政権維持のため、野党の社会民主党(SPD)との大連立協議を進めている。両党の交渉の中で、温室効果ガス排出量削減目標が障害となった。

 

 ドイツ経済は堅調に推移しているうえ、移民流入率の高さなどもあって、産業分野からの温室効果ガス排出量の削減は計画通りに進まない可能性が出ている。政府統計によると、16年現在の排出量は1990年比で27.6%減だが、これを40%減にまで引き上げるには、新たに石炭火力発電所の排出量を削減するなどの追加規制が必要になる。連立候補のSPDは、こうした措置をとると、電力分野での雇用削減につながることを懸念しているという。

 

 このため両党の交渉担当者は、2020年の40%削減目標の達成は無理ということでほぼ合意。代わりに、「2020年代の早期に40%削減」とする目標に切り替える方向という。同時に、パリ協定での国別目標である2030年までに55%削減の達成目標は堅持する、としている。しかし、2020年目標を先送りせざるを得ないのに、それより厳しい削減を目指す2030年目標を維持できるのか、という疑念も出ている。

 

 メルケル首相の側近のMichael Grosse-Broemer氏は「(交渉では)重要な進展があった。しかし、まだ両党間で協議しなければならないことが多数ある」 と弾力的な発言をしている。

 

 一方で、再生可能エネルギー発電の全発電量に占める比率の現行目標は、2025年までに45~55%だが、これを2030年までに65%に引き上げることでも合意したという。現行の再エネ比率は、昨年実績で約3分の1となっており、ほぼ倍以上にすることになる。

 

 再エネ普及のため、太陽光発電や洋上を含めた風力発電などの再エネ電力について、追加で4ギガ㌧の入札を行う計画や、エネルギーコスト引き下げのための減税案などでも合意しているという。ただ、これらの交渉担当者間の合意は両党の指導部の承認を必要とする。

 

https://www.reuters.com/article/us-germany-politics/german-coalition-negotiators-agree-to-scrap-2020-climate-target-sources-idUSKBN1EX0OU