HOME10.電力・エネルギー |日本の主要製造業の再エネ電力使用、2020年までに現状比2割増の計画。ただ再エネ比率は4%に満たず。国のエネルギー政策の弊害で「再エネ不足」が企業の足を引っ張る。日経が調査(各紙) |

日本の主要製造業の再エネ電力使用、2020年までに現状比2割増の計画。ただ再エネ比率は4%に満たず。国のエネルギー政策の弊害で「再エネ不足」が企業の足を引っ張る。日経が調査(各紙)

2018-01-21 13:39:11

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 日本企業の再生可能エネルギー電力の導入ペースが遅々としてあがらない。日本経済新聞の調査では、国内の主要製造業は2020年度までの4年間に、再エネ電力の使用量を現状より2割増やす計画としているが、消費電力全体に占める再生エネ率は20年度でも4%弱にしかならない。再エネ比率の低さは、欧米の機関投資家からマイナス評価を受けかねない。

 

 日本経済新聞の調査は、主要製造業144社を対象に、国内の自社工場やオフィスで使う再エネ電力の使用計画等を集計した。再エネ電力は、太陽光などの再エネ発電から電気を直接調達するほか、再エネ電気を使ったとみなすグリーン電力証書などのクレジット取引の活用も含めた。

 

 それによると、2020年度時点での再エネ導入計画は、調査対象企業全体で、16年度実績に比べ23.1%増の83億9100万kW時へと増える見通し。ただ、再エネ電力比率は、有効回答80社の単純平均で16年度の2.4%から3.9%へ1.5ポイント上昇するだけ。

 

 回答企業の中で、再エネ電力に力を入れるのが精密機器や電気機器、自動車関連、食品など、海外展開が進んでいる業種だ。たとえば、ソニーは20年度までに再エネ電力導入量を現在より4割増やす。再エネ電力比率も、今回の調査の全体平均より2.5倍増の1割に引き上げる計画だ。またデンソーは20年度までに導入量を12年度の10倍に引き上げる。

 

 しかし、欧米の大手企業の再生取り組みに比べると、こうした積極的な企業は限られている。たとえば、独自動車のBMWは、再エネ電力比率を現在の63%から20年までに100%に引き上げることを宣言。米アップルは自社拠点だけでなく、部品を調達するサプライチェーン全体での再エネ電力比率を高めている。

 再エネ電力比率を100%に引き上げることを宣言する世界の主要企業で構成する「RE100」宣言には、BMW、アップルのほか、グーグル、英蘭ユニリーバなど世界的企業約110社が参加しているが、日本企業はリコーと、積水ハウスの2社だけ。米マイクロソフトなどは、すでに再エネ100%を達成している。

 「再エネ電力比率」が注目されるのは、企業の持続可能性(サステナビリティ)を判断する指標の一つとして、世界の機関投資家が投資判断において重視しているためだ。

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 欧米主要企業の再エネ電力比率が高いのは、投資家の判断への対応を重視しているほか、企業が再エネ電力を発電事業者から直接買える仕組みが機能している点も大きい。アップル、マイクロソフト、グーグルなどは自前で再エネ電力を調達している。

 日本では、経済産業省が進める再エネ促進の固定価格買取制度(FIT)がある。再エネ電力の販売価格は同制度で優遇されるが、電力の販売面では、石炭火力などの化石燃料で発電した電気と混在して販売される仕組みとなっている。

 この結果、需要サイドでの再エネ電力選択需要が反映されず、結果的に太陽光パネルなど発電設備の導入コストの低下スピードは遅く、現在でもコストは欧州市場の2倍もあるという。こうした発電コストの高さに加え、既存電力会社への接続コストも高く、全体的にコスト低下が進まない構造的な課題がある。

 高コスト構造を打開するのは、新規参入者による競争刺激だ。だが、国のエネルギー政策の硬直性は、そうした新規参入者にとって高いハードルになっている。結果的に、再エネ電力の価格も高止まりを解消できず、再エネ電力量自体も増えないことから、企業側が再エネ電力を調達したくても、「玉(再エネ電力)」がない、という状況が続いている。

 こうした環境は、国内の既存発電方式の電力会社や、その関連企業にとっては有利だ。だが、国際競争下にある製造業などにとっては、「ダーティなエネルギー(石炭等)」による製品・サービスというネガティブ・キャンペーンを受け易くなるほか、ESG視点を強める機関投資家等からの選別にさらされるリスクを高める。日経も「国内で再生エネ電気を調達しやすくする環境整備が遅れると、日本の製造業の国際競争力を落とすことになりかねない」と指摘している。

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