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気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)対応、企業の「早期取り組み」意識は高いが、情報開示戦略が明確な企業はまだ限定的。シナリオ開発4社に1社。スイスSouth Poleの調査(RIEF)

2018-01-29 07:00:04

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  金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が昨年夏に公表した気候変動の影響を企業の財務情報に組み込む提言への取り組みがグローバル企業に求められている。欧州のESG調査会社が調べたところ、主要企業の3分の2は、率先して対応することのメリットを意識する一方で、実際に情報開示戦略を明確しているのは、まだ10社中1社弱でしかないことがわかった。

 

 調査は、サステナブル事業等の調査分析を専門とするスイスの「South Pole」が実施した。TCFDの報告に賛同署名をしたグローバル企業等34社を対象に、サステナビリティの担当者らにアンケート調査を行った。対象企業は欧米企業が中心で、FTSE 100の構成企業などが含まれている。日本企業は含まれていない模様。

 

 それによると、対象企業の3分の2は、TCFD報告を早期実施することによって「先駆的企業」としての評価を市場から得ることを重視している、との回答を得た。ただ、実際に報告に沿った情報開示戦略をすでに決めているところは、10社中1社にもまだ満たない。

 

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 TCFD報告の早期実施メリットへの理解は広く共有されていることが改めてわかった。回答企業が示したメリットは、投資家の満足、評判、そして気候変動のリスクとオポチュニティをより的確にマネージするため、などと理解されている。

 

 回答企業の10社中4社は、気候変動による物理リスクや低炭素経済への移行リスクを十分理解しているとしているが、これ等のリスクが自らの企業に及ぼす将来の影響を評価するシナリオ手法を開発していると回答した企業は、全体の4分の1にとどまった。4分の3の企業は、現状では、TCFDのガイドラインに沿った情報開示ができるかどうかは定かではない、と回答している。


 TCFD報告は、気候変動への対応をトップマネジメントが取り組む判断事項と位置づけ、企業戦略、リスクマネジメント等に盛り込むことを求めている。だがほぼ半分の企業は、TCFD関連の案件は、役員レベルではなく、CSR部門での取り扱いとなっているという。

 

 各企業がすでに実施している気候変動関連の情報開示法は、10社中9社がCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)への回答をあげている。同じく10社中8社はGRIを、4社は国際標準化機構(ISO)基準を、それぞれ使っている。その他、国際統合報告評議会(IIRC)、サステナブル会計基準審議会(SASB)、さらにフランスのエネルギー転換法の173条などと答えた。

 

 また10社中9社は、温室効果ガス(GHG)の測定・情報開示において、Scope1(直接排出)と同2(電力使用などでの間接排出)を開示している。また4分の3の企業は、GHGだけではなく、水消費量も測定し、3分の 2の企業は廃棄物も測定している。半分の企業は、会議や出張時のGHGであるScope3も測定対象にしている。

 

 さらに、3分の1の回答企業は、Scope1と同2の削減目標を定めたSBT(science based target)を設けている。加えて、15%の企業は、Scope3の削減目標も設定しているという。

 
 気候リスクを評価・対応する企業のガバナンス体制は、企業によってかなりの違いがある。ある企業は、気候関連のリスクマネジメントについては、経営陣直結のリスクマネジメントと位置付けている一方で、別の企業では、役員層への報告や戦略計画との適合などはなく、CSR部門を含む企業の各関連部門が気候リスクをマネージする体制となっている。

 https://www.southpole.com/