HOME8.温暖化・気候変動 |温暖化によるグローバルな海面上昇、現状のペースより倍増し、2100年には65cm(中位値)に達する。最大で77cmの可能性も。米研究チームが衛星データから推計。IPCCのモデル値とほぼ整合(RIEF) |

温暖化によるグローバルな海面上昇、現状のペースより倍増し、2100年には65cm(中位値)に達する。最大で77cmの可能性も。米研究チームが衛星データから推計。IPCCのモデル値とほぼ整合(RIEF)

2018-02-13 16:06:09

Sealevelキャプチャ

 

   米国の研究者グループは、世界の海面上昇のペースが加速しており、現在の年間上昇スピードを次第に上回って、2100年にはほぼ平均65cmの上昇になるとの推計をまとめた。同推計は、25年間の衛星による実測データを元に計算した。従来想定されていた海面上昇より2倍の数値になり、島嶼部や沿岸部等での適応対策を早期に本格化する必要がある。

 

図表のうち、赤線は1991年のピナツボ火山爆発の影響を除外した推計値、緑線はエルニーニョの影響を除外した値、青線が調整後の値)

 

 分析したのは、コロラド大学ボルダー校のR. S. Nerem教授、NASA(米航空宇宙局)の B. D. Beckley氏、米国待機調査センターの J. T. Fasullo氏、オールド・ドミニオン大学の B. D. Hamlington氏、コロラド大学宇宙力学調査センターの D. Masters氏、サウス・フロリダ大学のG. T. Mitchum氏らのチーム。米科学アカデミー紀要(PNAS)に論文を掲載した。

 

観測データを収集した海洋観測衛星TOPEXポセイドン
    観測データを収集した海洋観測衛星TOPEXポセイドン

 

 研究チームは、NASAと仏国立宇宙センター共同の海洋観測衛星であるTOPEXポセイドンのほか、合計4つの観測衛星データを分析に活用した。それによると、1993年以降のグローバル中位海面レベル(GMSL)の上昇は3±0.4mm/yとの実測値を得た。これは25年間で7cm以上、上昇したことを意味する。海面上昇の原因は、氷河や海氷等の氷解と海面温度の上昇によるとみられる。

 

 これらの数値は、潮の状況を測る軽潮器を使って得たデータとも整合性を持つ。Nerem教授らはこの衛星データを25年のスパーンで評価し、誤差、見せかけの整合性等を補正し、2100年までの変化を推計した。その結果、2005年比で 65 ± 12 cmに上昇する可能性を導き出した。最大で77cmとなる。これらの推計値は、国連の気候変動政府間パネル(IPCC)がコンピューターモデルを使って第5次評価レポート(AR5)で推計したレベルとほぼ一致するという。

 

 AR5のデータはコンピューターモデルによる推計値だっただけに、現実感が乏しいとの見方もあったが、今回の推計は実際の海面上昇データを元にした推計だけに、より現実的に温暖化の進行を映しているといえる。推計された海面上昇の特徴は、漸進的な進行ではなく、加速度的に高まる点だ。

 

  報告書をまとめたNerem教授は「この(海面上昇の)加速は、主にグリーンランド及び南極大陸の氷床融解の加速に起因する。2100年までの総上昇量は、海面上昇が一定のペースで進むと仮定した場合の約30cmではなく、2倍の60cmを超える可能性がある」としている。

 

http://www.pnas.org/content/early/2018/02/06/1717312115