HOME |住友林業 高さ350mの木造超高層建築物を2041年までに建設へ。「街を森にかえる環境木材都市」をコンセプトに(RIEF) |

住友林業 高さ350mの木造超高層建築物を2041年までに建設へ。「街を森にかえる環境木材都市」をコンセプトに(RIEF)

2018-02-15 17:54:30

sumitomorin2キャプチャ

 

 住友林業は、今月20日に会社創立70周年を迎えることを記念して、2041年を目標とした高さ350mの木造高層建築物を実現する「W350計画」を公表した。木材と鋼材を組み合わせた木鋼ハイブリッド構造で、建物の外周部分はバルコニー状とし、高層階まで緑を植栽できる。同社では「縦の森」として、地球環境、社会との共生が可能な新しい都市づくりの姿を打ち立てたいとしている。

 

 木造超高層ビルは、高さ350m、地上70階、建設面積6500㎡、延べ床面積455000㎡。利用用途は店舗、オフィス、ホテル、住宅など、従来型のビルと変わりはない。ただ、総工費は現時点の試算で約6000億円で、鉄筋鉄骨のビルに比べると約倍になる。今後は、実現までのコスト削減が大きな課題といえる。設計協力は日建建設があたる。

 

 同社の歴史は遡れば、1691(元禄4)年に住友家が別子銅山を開抗し、それに伴う備林経営の開始が起源になるという。その年から数えて350周年となる2041年を目標に据え、持続可能社会を象徴する「環境木化都市」の実現を目指すことになった。木造超高層建築物の基盤となる建設資材は、木材比率9割の木鋼ハイブリッド構造。構造は木材と鋼材を組み合わせた柱・梁の構造に鉄骨制振ブレース(筋かい)を配置するブレースチューブ構造とする。

 

 ブレースチューブ構造は、柱・梁とブレースにより筒形の殻(ブレースチューブ)を構成する構造システムをいう。柱や梁などで組まれた軸組に対角線状にブレース(筋かい)を入れることで、地震・風などの横からの力に対して建物が変形するのを防ぎ、鉄筋構造に劣らない強度を確保できるとしている。

 

sumitomorin3キャプチャ

 

 建物の一番外側は四周をぐるりと回るバルコニーとなる。バルコニー部分では新鮮な外気と豊かな自然、木漏れ日に触れられる空間が確保される。また各所に植栽を配置でき、高層階まで連続する緑は、都市での生物多様性を育む景観を構成する。鉄筋ビルの屋上緑化や壁面緑化を超えて、建物そのものが緑化されることになる。さらに建物内部は純木造とし、木のぬくもりや優しさを感じる落ち着いた空間を作り出せるという。

 

 高層ビルを木造化することによって、大量に使用する木材によるCO2の固定量が増大するほか、木材需要の拡大にもつながる。それは林業の再生を意味し、山間部の地域活性化にも資する。都市に暮らす人々にとっては、地上の緑が建物とつながり、都市全体が生態系の一部になることで、都市の生態系多様性に貢献することを目指す。

 

 目指す高さ350mの木造高層建築物で使用する木材量は18万5000㎥。同社が建設する木造住宅の約8000棟分に相当する。CO2の固定量としては約10万㌧CO2相当が可能という。また現在、国産材の供給量は木の年間成長量の1/4~1/5程度に留まっているが、木材の利用量が増えて、森林の成長量と同等になると、間伐や再造林などの森林整備の推進が進み、森を健全な状態に維持するとともに、CO2の吸収量を安定的に確保できることになる。

 

 sumitomorinn1キャプチャ

 

 木材高層建築物で活用する木材は、一定期間使用したのち一部を取り替えてメンテナンスする。取り替えた使用済み木材は、住宅用の柱・梁などに再加工・利用し、その後は新たな木質建材の原料にする等、都市の中で循環させることができる。最終的な廃材はバイオマス発電の燃料とし、バイオマス発電の燃焼時に発生する熱についても、木材の乾燥に利用できるなど、木材の「カスケード利用」によって資源効率社会の構築につながる。

 

 わが国では、2010年に「公共建築物等木材利用促進法」が施行された。同法によって、それまで非木造建築に限定されてきた公共建築物の木造化が推進されるようになり、各地で木造の公共施設が増え始めている。しかし、高さ350mという超高層建築物の建設構想が明らかにされたのは今回が初めてだ。

 

http://sfc.jp/information/news/2018/2018-02-08.html?utm_source=nikkei_digital&utm_medium=paper_digital&utm_campaign=W350_20180208