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欧州議会経済金融委員会(ECON)、サステナブルファイナンスのドラフト原案公表。金融当局にESG資産運用の義務的モデル作成、欧州中央銀行(ECB)のESG資産購入など盛り込む(RIEF)

2018-02-19 23:50:30

ECONキャプチャ

 

  欧州議会の経済金融委員会(ECON)は、サステナブルファイナンスについての第一次ドラフト原案を公表した。欧州委員会の「サステナブルファイナンス・ハイレベル専門家グループ(HLEG)」が先月末に公表した最終報告を受けた形で、HLEGの提案よりもさらに踏み込み、欧州金融監督各当局(ESAs)に対してESGを資産運用に統合するモデルの作成、各金融機関への座礁資産(ストランデッド・アセット)のストレステスト義務付け、2019年末までにグリーン・タクソノミーの確立などを求めている。

 

  今回の原案は欧州議会の英国選出のグリーン党所属の Molly Scott Cato氏がまとめた。Cato氏は、同案を土台に、ECON委員会内で調整を進め、4月中に最終ドラフト案を採用する考え。順調にいけば、5月後半に予定している本会議での採択を目指すとしている。ただ、欧州議会で採択されたとしても直ちに義務的な規制にはならない。閣僚理事会による採択が必要だ。

 

 だが、ECONの原案が、欧州委員会のHLEGの提案と歩調をとる形で、サステナブルファイナンスをEUの金融監督政策の中に位置づけることを目指しているのは間違いない。金融機関の健全性を軸としてきたこれまでのグローバルな金融監督行政の中に、気候変動などのESG要因を盛り込むことを、欧州委員会に次いで、欧州議会も正面から求める形となり、EUの政策バランスがどう動くかが注目される。

 

 先のHLEG報告は、ESAsに対して、サステナビリティ要因についても金融監督の視点から取り組むことを求めた。さらにECON原案では、すべての金融機関に対してカーボン関連の資産について温暖化の加速によって同重荷が増すかをチェックするストレステストの実施を義務化することを求め、さらに座礁資産の定義づけも求めている。

 

 金融にとってのグリーンの定義づけとなる「グリーン・タクソノミー」の確立のほか、投資家にとっての法的義務の主要部分を形成するスチュワードシップや、ESG要因を含めることのフィディシャリーデューティー(受託者責任)の確立なども要求している。

 

 また、EUの公的金融機関である欧州投資銀行(EIB)に対して、民間金融機関のモデルとして今後の融資は、パリ協定の1.5℃目標と整合性のあるものだけに限定すべき、としている。欧州中央銀行(ECB)が採用する量的緩和の金融政策についても、パリ協定とESGのゴールの両方と整合性のある資産購入プログラムを再デザインしたものを盛り込むことを求めるなど、大胆に提案している。

 

 「金融のESG化」とでも言うべき思い切った提案を原案に盛り込んだ背景には、 報告者のCato氏がグリーン党に所属していることも影響している。欧州議会の各政党は、各国の利害調整を図る閣僚理事会とは異なり、各政治理念に基づいて欧州横断的に党派を組んでいる。議員数が多いのは欧州人民党(キリスト教民主党)、社会民主進歩連合グループなどで、グリーン党は少数。

http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//NONSGML+COMPARL+PE-618.012+01+DOC+PDF+V0//EN&language=EN