ドイツ連邦行政裁判所。都市へのディーゼル車規制訴訟の控訴審で、都市の規制権限を認める。欧州各国に広がる可能性。ディーゼル車離れも加速へ(RIEF)
2018-02-28 00:03:52
ドイツのライプニッツにある連邦行政裁判所は、ドイツの環境・消費NGOがシュツットガルトとデュッセルドルフの両市当局を相手に、ディーゼル車の排ガス規制の強化を求めた訴訟の控訴審で、州や市、コミュニティは、連邦規制がなくとも、大気汚染を防ぐために規制をかける権限を有する、との判断を下した。地域の「環境権」を認めた形で、ドイツだけでなく、欧州各都市のディーゼル車規制に波及する可能性がある。
(写真は、ディーゼル車の都市中心部への乗り入れ規制を求める環境NGO)
訴訟は、ドイツの環境・消費NGOで政策ウォッチドッグの「Environmental Action Germany(DUH)」が両市の大気汚染状況が規制基準を大幅に上回っているのに、市民の健康を守る適切な規制を課していないとして、大型のディーゼルトラックなどを市内中心部から締め出す規制を求めて提訴した。一審段階では、市側がディーゼル車の乗り入れを禁止する連邦法がない、として反論したが、敗訴。両市が控訴していた。
ライプチヒにある上級審の連邦行政裁判所の Andreas Korbmacher判事は、「自動車への規制は一般的に受容可能で、不公平な効果を避ける形で規制を実施することは可能。EUのルールは、汚染を削減するうえで他に効果的な方法が見当たらない場合は、市当局は市民を守るため、対策を講じなければならない、と求めている」と指摘した。
上級審の判決は、規制を実施すべき、としたわけではない。しかし、市民の健康等を守る立場にある州や市、コミュニティは、連邦政府の法規制を待たなくとも、適切な行動をとることができる権利を持つことを認めた。
環境団体は、両市以外の他の都市でも、自動車の乗り入れ規制の実施、強化を求めて市当局を相手取った訴訟を起こしている。今回の司法判断は、そうした他の訴訟に影響を及ぼすだけでなく、ドイツ全体の都市での自動車規制につながるほか、似た環境にある欧州の他の都市にも広がりそうだ。
ドイツではミュンヘンやケルンなどの大都市を含む約70の都市で、自動車からの窒素酸化物による汚染が、EUの2017年規制の基準を上回っている。しかし、都市への乗り入れ規制が広がると、ディーゼル車が主力のドイツ自動車メーカーにとって、大きな打撃になる可能性がある。と同時に、電気自動車シフトが加速するとみられる。
ディーゼル車を巡っては、2915年にトップメーカーのフォルクスワーゲンが不正排ガス規制を行っていることが発覚、ディーゼル車離れが世界的に進んでいる。ドイツ国内市場での同車は、15年に市場のほぼ半分の48%を占めていた。だが、17年は39%に、今年は25%にまで下がると予測されている。今回の判決の結果は、さらにこの減少傾向を加速しそうだ。