米カリフォルニア州、カナダのケベック、オンタリオ両州と、温室効果ガスの排出権の共同入札を実施。㌧当たり14.5㌦強。EU-ETSの市場価格を上回る（RIEF）
2018-03-05 07:10:07
米カリフォルニア州とカナダのケベック州、オンタリオ州は、今年1月から、温室効果ガス（GHG）の排出権取引（C&T）を共通化し、このほど初のカーボンクレジットの共同入札を実施した。入札価格は、2016&18年物、2021年物ともカーボン㌧当たり14.5㌦強で、EU-ETSの入札価格よりも2㌦強高く落札された。
カリフォルニア州とカナダのケベック州は2014年以降、相互の排出権取引制度をリンクさせている。同年11月以降にはカーボンクレジットの共同入札にも踏み切った。今回、この2州の連携に、オンタリオ州が加わったことになる。
カリフォルニア州は2013年から、2020年の州内のGHG排出量を1990年レベルに抑制する政策の一つとして、C&Tを導入した。GHG排出量がCO2換算で年間25000㌧以上の事業者（鉄鋼業、ガラス、セメント、発電、製紙 業等）を対象としてスタート。今年から第3期間目に入っている。
同州の排出権取引では、毎年度の割当分を全量入札で企業等のGHG排出主体に売却している。今回の3州共同入札では、同州とカナダ2州分を合わせて、2016年と18年分の割り当て分9821万5920㌧と、2021年分の857万6000㌧が売却された。入札価格は前者が㌧当たり14.61㌦、後者が同14.51㌦だった。
この価格は、EU-ETSの2月末時点の排出権価格の9.8ユーロ（約12.05㌦）よりも高めとなった。EUの排出権入札量は2月が8430万㌧と、米加両州の入札量よりも大きく上回っている。米国の排出権価格が高めなのは、経済が好調なことも影響している。
昨年末に中国が全国規模の排出権取引制度（C-ETS）の発足を宣言した。だが、中国では実際の全国規模のC&T取引は実施されていないとされる。本格取引は来年以降の見通しだ。米国ではニューヨーク州などを含めた北東部9州でも、発電所を対象としたC&Tを軸としたGHG削減イニシアティブ（RGGI）が実施されている。
オンタリオ州首相のKathleen Wynne氏は、初の3州共同入札について「われわれはEUに次ぐ、第二の規模のC&T市場を作り上げた。さらに米国の排出権市場を拡大するため、今後も他の州の参加を求めていきたい」としている。
他州の動きとしては、ノバ・スコティア州がこの秋にC&T制度の導入を決めているほか、カナダ連邦政府が各州政府に対して、C&T制度かカーボン税のどちらかを導入して、カーボンに価格付けすることを求めている。
ただ、C&T制度に対しては、カナダでも経済界を中心にして制度を嫌う動きがある。オンタリオ州でも、C&T市場の共同化は、州内企業が価格の安いカリフォルニアなど他州のクレジットを買うことになり、同州のGHGの実質削減につながらない、との指摘もある。さらに、他州のクレジットを買うことで、年間4億6600万㌦の経済的流出が起きるとの試算もある。
しかし、同州のWynne首相は 「C&T制度の相互リンクは、単独で制度を維持するよりも、はるかに効率的で費用対効果も高い。GHGの削減効果としては、カーボン税よりもC&Tのほうが効果が高い。C&Tは、もっとも経済的に安価にGHG削減を可能にする」と、C&Tへの批判論に反論している。
ケベック州首相のPhilippe Couillard氏も「C&Tは経済を傷つけずに、カーボンに価格付けをする効率的な制度。わが州は低失業率を続け、経済成長も順調だ。こうした事実は、C&Tが経済にマイナスの影響を与えないことを物語っている」と述べている。
カリフォルニア州のJerry Brown知事は「トランプ大統領は気候変動との闘いを政策アジェンダに取り上げないようだ。だからこそ、準政府機関の州が前進することが重要だ。米国では気候変動対策は、ワシントンではなく、草の根ベース、州ベースで非常に強力な動きが起きている」と、3州の連携の効果を強調している。
https://www.arb.ca.gov/cc/capandtrade/auction/results_summary.pdf
Research Institute for Environmental Finance