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国に3度目の賠償命令 原発「自主避難」の京都訴訟。自主的避難の合理性認める。原告110人に対し約1億1000万円支払い命じる(東京新聞)

2018-03-15 17:24:03

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 東京電力福島第一原発事故の影響で避難を強いられたとして、福島県などから京都府に移った自主避難者中心の住民百七十四人が国と東電に慰謝料など約八億四千六百六十万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁は十五日、自主避難の合理性を認め、国と東電双方に対し、百十人へ約一億一千万円を支払うよう命じた。全国で約三十ある同種の集団訴訟では五件目の判決で、国の責任を認めたのは三件目。

 

 津波対策を巡る国と東電の責任の有無や範囲のほか、自主避難者が事故前に住んでいた避難指示区域外での低線量被ばくの危険性が主な争点。

 

 浅見宣義裁判長は、避難指示に基づく避難でなくとも、個人ごとの当時の状況によっては自主的に避難を決断するのも社会通念上、合理性があると判断。政府機関が二〇〇二年に発表した地震に関する「長期評価」に基づき、国が津波をある程度予見することは可能で、東電に対して対応を命じなかったのは違法と指摘し、「遅くとも〇六年末に東電への規制権限を行使していれば、事故は回避できた可能性が高い」とした。

 

 一方、低線量被ばくの危険性については「科学的知見が未解明の部分が多く、健康影響は明らかでない」として、避難の相当性を考慮する上での判断基準とはしなかった。その上で、原告の当時の居住地や避難時期、子どもがいたかどうかなどの独自の基準を示して、避難が相当だったかを個別に検討した。損害については避難時から二年までに生じた分のみ事故との因果関係を認めた。

 

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 原告側弁護団は原告のうち六十四人の請求が棄却された点などを不服として控訴する意向を示した。

 

  京都訴訟の原告は事故当時の福島、宮城、茨城、栃木、千葉各県の住民。健康への影響を恐れ、大半が国の指示によらず自主的に避難せざるを得なかったとして、一人当たり原則五百五十万円を求めた。判決は東電が賠償対象とした区域の外に住んでいた二十人についても避難の相当性を認めた。

 

 十六日には東京地裁、二十二日には福島地裁いわき支部で同種訴訟の判決が予定されている。

 

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 「好きで避難したのではない」。東京電力福島第一原発事故から約七年。原発避難者京都訴訟の原告の一人、川崎安弥子さん(50)は日常を奪われた悔しさや不安を胸に、長い自主避難を続ける。次男の中学卒業式のため、十五日の判決当日は法廷で見届けられなかったが、自身の避難の相当性が認められたとの連絡を受け、「うれしい。国と東電には、人の命を守る政策に転換していってほしい」と喜んだ。

 

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 当時、中一から未就学までの息子と娘の三人を連れて茨城県北茨城市から京都市伏見区に避難したのは六年前。事故後に周囲の放射線量などを調べるうちに不安が募り、避難を決意した。夫は地元に残り、家族は離れ離れになった。

 

 京都府が福島県以外からの避難者にも住宅を無償提供していたことが決め手になった。二〇一二年一月に入居した集合住宅には八十世帯以上の避難者が居住。「地元で言えない不安や怖さを共有できて、ほっとした」と振り返る。

 

 しかし、避難生活二年目の十月、中三だった長男が夫の元に帰った。京都での生活になじめず、不登校になっていた。故郷に帰りたいという気持ちを止められなかった。「自分のことに精いっぱいで余裕を失っていた」。長男の気持ちに向き合えなかったことを悔やんだ。

 

昨年三月、福島県が自主避難者への住宅の無償提供を打ち切った。京都府と京都市は独自の支援策で入居から六年間の無償提供を続けているが、先の生活を見通せず、転居する避難者も多い。

 

 川崎さんも集合住宅を離れ、今は近くのアパートを借りて暮らす。避難から六年が経過し、ようやくなじんできた残る子ども二人を思うと、環境をこれ以上変えたくなかった。それでも、「いつかは地元で家族そろって過ごしたい」との思いは常にある。住民票も北茨城市に置いたままだ。

 

 「今後の人生のことをいくら考えても、また壊されるんじゃないかという不安が今もある。その日その日を頑張って生きていくしかない」と静かに語った。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018031590135122.html

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018031502000270.html