「韓国は、アジア・太平洋のグリーンボンド市場のリーダー候補」。英Climate Bonds Initiativeが報告書で評価。政策と債券市場の厚みを評価。日本は後位に（?）（RIEF）
2018-03-20 22:16:01
グリーンボンドの普及団体、英Climate Bonds Initiative（CBI）は初の韓国のグリーンボンド市場の分析レポートをまとめた。同国でのグリーンボンド発行は現在まで 6件（総発行額20億5000万㌦）で、アジア・太平洋諸国では5番目の規模だが、CBIは「韓国はアジアだけでなくグローバル市場でも最高の発行市場候補だ」と評価した。
（写真は、SK Securitiesの気候問題シニアアドバイザーのKwangyul Peck氏（左）、CBIのSean Kidney氏（中）、CBIのSerena Vento氏（右））
CBIのレポートは韓国のSK Securitiesの依頼でまとめられた。韓国でのグリーンボンド発行は、第一号は日本より早い2013年に韓国輸出入銀行（KEXIM）が発行したが、その後同行以外の追随はなく、2017年になってようやく韓国開発銀行（KDB）、 韓進Internationalが相次いで発行した。
それでも、発行総額の20億5000万㌦は、中国（4770億㌦）、インド（660億㌦）、日本（610億㌦）、オーストラリア（460億㌦）に次ぐ5位。ただ、 CBIは、韓国の債券市場で約180億㌦規模の気候関連事業を資金使途とするボンド発行がある、と指摘する。これらは市場基準のグリーンボンド原則や、CBIの気候ボンド基準（CBS）などの認証を得ていないが、低炭素経済への移行と連動した資金調達で、「潜在的グリーンボンド」とみることが可能という。
CBIが韓国グリーンボンド市場の成長可能性を高く評価する理由の一つは、まず、韓国政府が温暖化対策に強い姿勢をとっていることをあげている。パリ協定での国別約束目標は温室効果ガス排出量を2030年に37%削減を約束しており、その目標達成のために、2015年には日本に先駆けて温室効果ガス排出権取引制度をスタートさせるなど、明確な政策措置を打ち出しているためだ。
こうした政府の強いコミットメントと、政策導入意欲は、グリーンプロジェクトに資金を供給するグリーンボンド市場の育成・成長にも、効果的な支援策を期待できる、とみている。さらに、韓国の債券市場は年間発行額が7億㌦規模で、累積1兆6000億㌦の大きな市場である。豊富な経験を持つ発行体、投資家が、「潜在的グリーンボンド」の顕在化とともに、政府の政策と連動して、グリーンボンド発行を加速する可能性を示している。
このほか、CBIは韓国グリーンボンド市場を盛り上げる要因として、金融システムの安定性、産業主導の経済構造、主要な公的機関による債券発行市場での主導的立場、地域の投資市場の広がり、なども列挙している。
現在までのところ韓国では、民間金融機関によるグリーンボンド発行がない。この点では、政府の温暖化対策が市場に広がり、民間需要が喚起されると、民間銀行が主要な発行体として登場してくる可能性がある、とみている。
国の温暖化政策を、個々の温暖化対策プロジェクトにつなぎ、そのための資金調達をグリーンボンド発行でまかなう。そのために、CBIは韓国政府に向けて、グリーンボンド市場への信頼性を高めるため、いくつかの提案をしている。
①グリーンボンド国債の発行や公的機関による戦略的な発行②（日本では環境省独自のグリーンボンドガイドラインを出しているが）国全体のグリーンファイナンス・ガイドラインが必要③国内の投資家向けの税制優遇措置④グリーンプロジェクトの透明性を強化するための市場基準への支援⑤中央銀行による強い市場シグナルの提供――など。
CBIのCEO、Sean Kidney氏は「気候変動対応のための膨大なインフラ投資機会が、内外に存在している。気候変動と温室効果ガス排出量削減目標に合致するような資本の再配分はもっと加速されねばならない」と指摘しており、韓国市場がそのリーダーの一つになり得る可能性を強調している。
CBIのKidney氏は日本にも再三、来日、環境省や金融庁などとも意見交換を重ねてきた。だが、政府の温暖化対策の「不揃いぶり」で、「日本より韓国」とその期待を変えたとみられる。
Research Institute for Environmental Finance