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大手タイヤメーカーのグッドイヤー社。タイヤの中で苔を培養、その光合成で走る度に空気がきれいになるコンセプトを開発・公開。グッドなアイデアですね(RIEF)

2018-03-21 22:41:05


  大手タイヤメーカーのグッドイヤー(Goodyear)はタイヤの中に苔(こけ)をAI制御で培養し、苔のCO2吸収力で温暖化対策に貢献する「Oxygene」と名付けたタイヤのコンセプトをデザイン・開発し、ジュネーブで開いた自動車ショーで公開した。苔の光合成でAIの電力をまかなうことも可能という。それにしても、この発想、大変「グッド」ですね。

 

 公開されたのはコンセプトで、商品としての実用化のめどはまだ明らにされていない。他のタイヤメーカーも、AIを取り込んだり、発電機能を備えた新型タイヤや、インテリジェント・タイヤなどの開発で競っているという。

 

 グッドイヤーの特徴は、何と言っても、タイヤの中で苔を培養するという奇想天外なアイデア。実は、そのシステムのカギは苔よりもAIシステムが握っているという。AIがタイヤ内部の環境を苔の生育に最適な状態に維持する。苔の生育に欠かせない適度な水分と、多すぎない日射もAIが供給する。

 

水分は外部からタイヤ内に吸収し、苔を培養する
水分は外部からタイヤ内に吸収し、苔を培養する

 

 まず水分は、走行中にタイヤのトレッド(接地面)から道路上の水分を取り込み、苔の乾き具合に応じて自動で供給する。苔は適度な日射を受けて光合成するが、光合成に必要なCO2は、タイヤの側面部から大気を取り込むことで満たす。微妙な日射は光合成のエネルギーを活用して供給、光合成で発生した酸素はタイヤの同じ側面部から排出する。

 

 仮に自動車本体からCO2を一切出さない電気自動車(EV)や燃料電池車(FV)に、この「Oxygene」タイヤを装着すると、その空気清浄効果で、走行するたびに周辺のCO2が吸収され、酸素が増えることから、大気環境がきれいになるわけだ。仮にフランスのパリ市内で現在、走行する約250万台の車のタイヤを「Oxygene」に切り替えると、年間、4000㌧のCO2を吸収し、3000㌧の酸素をパリに供給できるという。

 

 苔は植物なので高速回転が続いても「目を回さない」ようだ。苔の光合成で生産されるエネルギーは、制御するAIシステムやセンサーなどの電源にも利用できる。またブレーキや車がカーブする際には、その電源でタイヤを光らせ、周囲に注意を喚起することもできる。

 

good1キャプチャ

 

 タイヤ自体は、古いタイヤを破砕してゴムのパウダー状にしたものを、3Dプリンターで製造したものなので、通常の空気で膨らませるタイヤのようにパンクする心配がない。またタイヤのトレッドから取り入れた水を使って、ウェットグリップ構造になっており、安全性も高いという。

 

 さらには、光速のコミュニケーションシステムも装備している。「LiFi」と呼ぶこのシステムは、タイヤをインターネットに接続するIoT(モノのインターネット)で、車同士(V2V)、あるいは車とインフラストラクチャー(V2I)とのデータ交換ができる。未来のスマート・モビリティにとって欠かせない要素でもある。

 

 グッドイヤーEMA(欧州・中東・アフリカ)の社長Chris Delaney氏は「2050年には世界人口の3分の2以上が都市で生活する。そうなると都市環境での輸送システムの需要は相当増大する。現在よりも、よりスマートで、よりグリーンなインフラと輸送機関の整備が、都市化加速の課題を解決するためには需要だ。Oxygeneは生活の質と都市住民の健康の向上に貢献する」と述べている。

https://corporate.goodyear.com/en-US/media/news/goodyear-unveils-oxygene-a-concept-tire-designed-to-support-cleaner-and-more-convenient-urban-mobility.html