HOME8.温暖化・気候変動 |世界気象機関(WMO)、2017年の気候変動報告。経済的損失額は過去最高の3200億㌦(約34兆円)。ハリケーン被害増と干害被害増が影響(RIEF) |

世界気象機関(WMO)、2017年の気候変動報告。経済的損失額は過去最高の3200億㌦(約34兆円)。ハリケーン被害増と干害被害増が影響(RIEF)

2018-03-22 23:27:18

 

  世界気象機関(WMO)は22日、2017年の気候変動状況を公表した。昨年は米国やカリブ海諸国を襲った大型ハリケーン被害やインド大陸での大規模モンスーン洪水、東アフリカでの頻繁な干害被害などで、気候変動被害としては過去最高の計3200億㌦(約34兆円)の経済的損失を計上したという。

 

 経済的損失額はドイツのミュンヘン再保険の評価に基づく。2017年のグローバル平均気温は産業革命前の気温よりも約1.1%上昇した。2013年から17年までの5年間の平均気温は過去の5年間に比べてもっとも高かったことも確認された。さらに過去もっとも温度の高かった年の上位9位まではすべて、2005年以降の年に集中している。

 

 継続する気温上昇は海洋の温度も上昇させる。その結果、海上で発生するハリケーンの威力も増強される。17年にカリブ海で相次いで発生し北米を襲ったハーベイ、イルマ、マリアの3つのハリケーンによる経済的損失は2650億㌦(約28兆円)に達した。これ等の暴風雨の直撃を受けたドミニカの被害額はGDPを2.24倍も上回る13億㌦にもなった。

 

WMO4キャプチャ

 

 気候変動の経済的影響は、低所得国などに集中する。国際通貨基金(IMF)の指摘によると、気温の1℃上昇は多くの低所得国の経済成長を大きく低下させる可能性があるという。脆弱なインフラ基盤の破壊によって、経済活動や生活基盤全体が打撃を受けてしまうからだ。

 

 熱波の影響による病気の罹患率や死亡率は1980年以来、毎年確実に上昇。世界の人口の約30%は、年間少なくとも20日間は厳しい高温にさらされる気候状況に置かれている。2016年には、気候関連災害によって2350万人が住居を失っている。こうした住民被害の大半はアジア太平洋地域での洪水や暴風雨によって引き起こされている。

 

 またアフリカのソマリアでは、激しい干害と食料不足が続き、16年11月から17年12月までの間で、89万2000人が難民化した。同国では17年6月時点で、農業面積の半分以上が干害の打撃を受けた。また家畜も干害による病弱死や生活苦での売却等で16年12月以降、40~60%も減少、さらに生活の困窮さを加速させている。

 

WMO5キャプチャ

 

 食料生産への影響は特にアジア諸国の農村地帯で発生している。17年5月には激しい雨が降り続け、スリランカの南西部では多くの洪水や地滑りが発生した。穀倉地帯での洪水多発の負の影響は、干害の影響ですでに食料不足に直面している地域で、さらなる食料危機を引き起こしている。

 

 また2年連続して海面気温が年平均を上回る上昇を示した東オーストラリアの沿岸地域では、グレードバリアリーフのサンゴ礁の白化を引き起こしている。気候変動による海洋の酸化も進んでいる。UNESCOの政府間海洋学委員会(IOC)によると、海洋の酸性化は海洋のサンゴ礁に影響を及ぼすだけでなく、魚類、海産物などの海洋資源や海洋文化、その他の海洋生態系などに直接的な影響を及ぼしている。

 

https://public.wmo.int/en/media/press-release/state-of-climate-2017-%E2%80%93-extreme-weather-and-high-impacts