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東京都の官民連携インフラファンド、福岡県で石炭火力発電事業に30億円出資。バイオマス混焼だが、温暖化阻止に逆行、と環境NGOが批判(RIEF)

2018-03-24 11:27:19

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 東京都は、都が推進する官民連携インフラファンド事業で、福岡県での石炭・バイオマス混焼発電所に対し30億円を投資した、と公表した。これに対し、環境NGOからは地球温暖化阻止のパリ協定に逆行する、との批判が出ている。C40(世界大都市気候先導グループ)に加盟し、温暖化先進首都を目指す東京にとって疑問の残る投資判断である。

 

 都が発表した石炭火力事業への投資は、都の官民連携インフラファンドの一つ、「IDIインフラストラクチャーズ」が新たに投資を決めた2件の案件のうち、福岡県)福岡・北九州市の響灘火力発電所に対して総事業費約300億円の1割に相当する30億円を投じた。出力約112MWで、石炭とバイオマス(木質ペレット)の混焼発電。2019年2月に運転開始に向け、現在、建設工事中だ。

 

 気候問題NGOの気候ネットワーク(KIKO)によると、石炭火力発電は、最新の設備であってもLNGの2倍以上のCO2を排出し、気候変動への影響が大きい。CO2削減のためにバイオマス混焼にする本件の場合でも、事業者の「建設事業環境影響評価準備書」によると、年間58.4万㌧のCO2を排出する。

 

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 東京都は環境省がいまだに実施できていないCO2排出量削減のためのキャップアンドトレード型排出量取引制度を実施しており、2016年度実績では前年比 12 万㌧を削減した。しかし、ファンドの投資先の石炭火力発電ができると、その削減量の約4倍の排出量増加に貢献してしまうことになる。

 

 また石炭火力発電は、CO2排出量を増加させるだけではない。直接の健康被害を引き起こす硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、PM2.5などの大気汚染物質も排出、周辺地域での健康影響被害を増大させる可能性がある。

 

 パリ協定の発効を受けて、世界では温暖化対策が本格的に始まっている。再生可能エネルギ―などへの積極的な投資とともに、石炭などの化石燃料関連産業からの撤退が同時的に進行している。

 

 金融機関や機関投資家が化石燃料産業への投融資を取りやめる「ダイベストメント」を宣言した件数は850機関以上、運用資産総額6兆㌦以上に達している。ダイベストメントの動きは、金融業界だけでなく、東京都同じくC40の主要メンバー年であるニューヨーク市も実施しており、他の自治体にも広がっている。

 

 KIKOは「温暖化問題に対処するため、世界全体で今世紀中の早い段階に脱炭素化することが求められている。とりわけ石炭火力は膨大なCO2を排出することから、世界的に脱石炭の潮流がある。今回の都の決定は、明らかにパリ協定に反する。環境相ヲ務めたこともある小池知事は今回のインフラファンドの決定を直ちに停止させるべきだ」と主張している。


 IDIインフラストラクチャーズが発表したもう1件の投資案件の千葉県袖ヶ浦市での「椎の森発電所」事業はガス燃料で、CO2排出量は石炭火力より3割地前後少ないとされる。出資額は25億円。

 

  IDIインフラ社は大和証券グループと、みずほ証券系のインダストリアル・ディシジョンズ(IDI)が主要株主のファンド運営会社。HPによると、現在、3つのファンドを運用、うち2つはすでに投資実行を完了しており、投資活動中なのは3号ファンド(規模500億円)。日本だけでなくアジア各国でも発電事業や石油・ガス等のエネルギー開発などの事業に投融資しているという。

 

 都の官民連携インフラファンドには別途、スパークス・アセット・マネジメントが運営するものもある。同ファンドはこれまでに熊本県のメガソーラー事業など12件に投融資を続け、今年1月末で満期を迎えた。

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/03/20/02.html

http://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2018/03/e0a487c3e438c1137a8ccbe0ae1c9a96.pdf