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JXTGエネルギー、静岡市内で計画中の大規模天然ガス火力発電所の建設撤回へ。地元住民、自治体そろっての反対の壁を崩せず(各紙)

2018-03-24 21:09:06

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 各紙の報道によると、石油元売り最大手のJXTGエネルギーは24日、静岡市内で計画していた大型天然ガス(LNG)火力発電所の建設を断念する方針を固めた。同発電所の計画を巡っては、地元住民だけでなく川勝平太静岡県知事や田辺信宏静岡市長らも市の都市づくりのコンセプトに合わないと反対を表明していた。

 

 日本経済新聞が報じた。JXTGでは、液化天然ガス(LNG)を燃料とする火力発電は、石炭火力発電よりもCO2排出量が少なく、環境影響は少ないとの判断で建設計画を進めてきた。だが、地元全体の反対を受けて計画を断念する。代わりの電源の確保については、関東などの地域での発電所建設を目指すなど、戦略を変更する方針という。

 

 JXTGが計画していた「清水天然ガス発電」は、JXTGのほか、清水建設と静岡ガスが出資して設立した。建設地はJXTGが保有する静岡市清水区内の事業所の遊休地を利用し、LNGを燃料とする火力発電所を建設する計画だった。

 

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 建設予定地は、東日本と西日本の両方に電力を供給できる好立地で、JXTGにとって、首都圏が中心の電力小売りを全国に広げるための拠点として期待していた。当初は発電容量最大200万kWを予定した。

 

 だが、当初から地元の反対が強く、2度の計画変更を経て、現在は60万kW級と50万kW級の各1基を建設、合計約110万KWを発電する計画に変更していた。最終的に環境アセスメントを経て、地元の了承を得たうえで2018年中に着工し、2022年に稼働の予定としていた。しかし、県、市がそろって反対するなど、最後まで地元の了承が得られる見通しがつかなかった。

 

 計画中の火力発電の建設予定地は、JR清水駅から約400mの場所で、市が計画する市役所の清水庁舎建設予定地に近いなど、市の街づくりを「無視」する形で計画が進んできたことも、地元の反発理由になったとみられる。

 

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 CO2排出量は石炭火力よりも相対的に少ないが、窒素酸化物(NOx)などの排出量が増える。また東海地方で、将来、予想される南海トラフ地震や津波時の対策が懸念される中で、市の中心街に大規模な発電所を新規に設置することの安全性への懸念なども指摘されていた。

 

 今回のJXTGの静岡火力発電の問題は、大規模な火力発電所の建設は、温暖化への影響だけが問われるのではなく、都市づくり、生活環境、健康、景観など多様な範囲に影響を及ぼす点を提起した。都市での発電について、従来のような集中・大規模型ではなく、分散・小型化、あるいは再エネを使ったバーチャル発電所など、生活空間と親和性のある新たな仕組みへの切り替えが求められているといえる。

 

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