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米独立系電力最大手のAES、TCFD勧告に沿った情報開示を宣言。2℃目標のシナリオ分析で企業価値を評価。同時に、保有石炭火力資産を売却、再エネ資産と入れ替え実施(RIEF)

2018-04-09 19:38:49

AES1キャプチャ

 米国の大手独立系電力会社のAES Corporation(バージニア州)は、TCFDの勧告に沿った気候関連財務情報を開示すると公表した。情報開示に際しては、勧告が提唱したシナリオ分析を、パリ協定の2℃目標に基づいて企業価値への影響を試算する。同時に、保有資産の脱炭素化促進のため、石炭火力発電4.3GW分を売却あるいは償却する一方で、再生可能エネルギー資産2.3GW分を新たに取得する資産入れ替えを実施する。

 

 AESはフォーチュン200にも採用されている独立系の総合エネルギー企業。石炭火力などの化石燃料発電や太陽光発電などの再エネ発電事業等を、米国だけでなく、世界15カ国で展開している。 社長でCEOの Andrés Gluski 氏は「気候関連の情報開示を促進し、われわれの財務報告書で開示することは、気候変動関連のリスク・オポチュニティに関する投資家の分析を高めることにつながる」と指摘、投資家による企業評価に気候変動の影響を含めることを促すことを重視する姿勢を強調した。

 

 AESは自前の資産として、石炭火力発電所も抱える。だが、これまで経営の柱に持続可能性の維持を据えてきた。このため、気候NGOのCDPを含め、FTSE4Good、RobecoSamなどの評価機関からも高いESG評価を得ている。Gluski氏は、気候変動に影響を及ぼす度合いの高いエネルギー産業として、TCFDの情報開示を率先して取り組む意義を、これまでのサステナビリティ経営の評価をさらに高める「ステップ」と位置づけている。

 

 AES2キャプチャ

 

 TCFD勧告の採用に先立ち、同社は自社が抱える炭素負荷量を2030年までに現在(2016年)より半減させる目標を公表した。これまでは、2020年までに25%(2000万㌧)の削減目標を公約していた。今回は、30年までに、削減目標を倍に引き上げることになる。

 

 保有資産の低炭素入れ替えは、そうした目標実現のための具体策である。今回、売却あるいは償却を決めた石炭火力発電所4.3 GW分は、米国だけでなく、他の国で操業している分も入っている。同社の保有する石炭火力全体の37%に相当する。

 

 逆に、新たに調達・契約する再エネ関連資産 2.3 GWには、米国の大手独立系太陽光発電事業者であるsPower社との長期電力購入契約のほか、ドイツのシーメンスとAESが共同で設立した蓄電池会社Fluenceの活用なども含めている。AESは日本の三菱商事と提携してインドでもグリッドレベルでの大規模蓄電設備の建設を実施している。

 

 TCFD勧告の採用に際して、同社では経営層を含むハイレベル委員会を結成、法的側面、企業のリスクマネジメント面、財務面などを分析したうえで、導入を決めたとしている。経営の基本戦略として気候関連財務情報開示を位置づけていることを裏付ける。

 

 AESは1981年の創設で、技術力を生かして各分野でのパイオニア的な役割を展開、事業規模を内外に拡大している。2017年の売り上げは110億㌦、保有資産330億㌦。海外展開は英国を皮切りに、アルゼンチン、パキスタン、中国、ハンガリー、ブラジル、インドなどで基盤を拡大している。

 

 再エネ分野でも、バイオマス活用技術をカタールやオマーン、スリランカなどで実践しているほか、風力発電は専用子会社のAES Wind Gnerationが米国や欧州で展開、太陽光発電もAES Solar Energyを傘下に持つ。

 

http://www.aes.com/investors/press-releases/press-release-details/2018/AES-Announces-Commitment-to-Adopt-Recommendations-of-the-Task-Force-on-Climate-Related-Financial-Disclosures/default.aspx

http://www.aes.com/investors/investors-overview/default.aspx