仙台でのバイオマス混焼石炭火力発電計画から四国電力が撤退。「十分な事業性が見込めない」の理由。残る住友商事の対応に投資家も注目（RIEF）
2018-04-13 07:05:39
四国電力と住友商事が計画していた宮城県仙台市での石炭火力バイオマス混焼発電所計画から、四国電力が撤退を表明。同計画の行方がにわかに不透明になってきた。四国電力撤退後も住友商事は引き続き検討する、とされるが、四国電力が「十分な事業性が見込めない」と判断した事業を推進する際の、住友商事の経営判断が問われる。
焦点となっているのは、両社が仙台市宮城野区にある仙台塩釜港の工業専用地域で計画していた石炭バイオマス混焼火力発電所「仙台高松発電所」（仮称）。計画では、発電規模11.2万kWの石炭と、木質バイオマス（ペレット）を燃料とするもので、2017年3月の段階では、2021年度上期中に営業運転を開始する予定だった。
現在、同計画は仙台市環境影響評価条例に基づく環境影響評価手続きの過程にある。同発電所は、仙台市に近接し、周辺環境への影響がある恐れがあるとして、住民側から反対の意見が多く上がっている。仙台市も昨年末、石炭火力建設抑制の独自の「指導方針」を策定している。http://rief-jp.org/ct4/75061
仙台市の指導方針は、仙台港周辺では今回の計画をはじめ、石炭火力建設計画が相次ぐことから建設に歯止めをかけるためのものだ。市が条例ではなく指導方針を出したのは、国が石炭火力発電建設を容認し、環境省も十分に規制しようとしていないことから、自治体独自で立地計画を規制することは法的に困難、という事情が背景にあった。http://rief-jp.org/ct4/73652
こうした状況の中、当初、建設に積極的だった四国電力は10日、「昨年3月以降、環境影響評価条例に基づく環境アセスメント手続きを進めてきたが、本計画には十分な事業性が見込めないとの判断に至った」として、事業化断念を正式に表明した。
これを受けて、反対運動を続けている「仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会」の共同代表、長谷川公一東北大大学院教授は「四国電力の撤退を歓迎する。事業のパートナーである住友商事にも撤退の英断を強く求めたい」と求める声明を出した。
四国電力が撤退を決断した背景には、市条例に基づく環境アセスメント手続きの過程で、市の審査会から「蒲生干潟など周辺環境への影響を調査してほしい」など厳しい注文が相次いだことのほか、市民の反対の根強さ、温暖化対策に逆行することへの投資家からの指摘等を考慮したとみられる。
四国電力撤退後も、住友商事は事業化の検討を継続する、という。この点についても、市の担当者は「『市民の不安払拭（ふっしょく）に最大限努める必要がある』ことなどを求めた昨年８月の市の意見書に基づき、進めてほしい」（環境共生課）と指摘、住友商事に合理性のある対応を求めている。
住友商事は、グループ全体の環境方針として、「グローバル企業として、環境問題が地球的規模の広がりを持つとともに、次世代以降にも及ぶ長期的な問題であることを認識し、健全な事業活動を通じて、社会・経済の発展と地球環境の保全が両立した『持続可能な発展』の実現に向け努力する」ことを明言している。https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/sustainability/environment-policy
事業計画のパートナー企業が「採算性が見込めない」として撤退し、地元の市も市民も反対を鮮明にした事業を前に、住友商事自体は「社会・経済の発展と地球環境の宝前の両立」を社の方針として宣言しているわけだ。こうした状況の中で、同社の経営陣は、どのような経営判断をするのか。市民とともに、投資家も注目している。
日本政府が国内で推進している石炭火力発電の新設問題は、パリ協定の目標達成に向けた国際合意に反するとの声が海外でも多い。こうした声は、単なる批判にとどまらず、環境NGOや機関投資家による事業会社への直接行動等につながっている。昨年3月には関西電力と東燃ゼネラル（JXTGエネルギー）が東京湾岸での石炭火力新設計画を断念するなど、計画の見直しが広がり始めている。
Research Institute for Environmental Finance