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国際海事機構(IMO)、国際海運によるCO2排出量を2050年までに50%削減で合意。ただ、具体的な実施対策の提示はこれから。環境NGOなどは実効性に疑問(RIEF)

2018-04-14 22:32:15

IMOキャプチャ

 

 国際海事機構(IMO)は13日、ロンドンで開いた「海洋環境保護委員会(Marine Environment Protection Committee :MEPC)で国際海運の船舶から排出されるCO2排出量を2050年までに現行(08年)比で50%削減することで合意した。IMOの交渉は7年越しで、ようやくまとまった形だ。京都議定書以来、国際航空と同海運は規制外だったが、2016年に航空が対象となり、国際海運の扱いが課題となっていた。

 

 (写真は、IMOの海洋環境保護委員会の模様)

 

 MEPCでの決定は多数決で、参加約100カ国の大半は賛成したが、トランプ政権の米国とサウジアラビアの2カ国が反対票を投じた。MEPCは2050年の目標を定めるとともに、パリ協定による「2℃削減」との整合性についても合意に含めた。

 

 IMOは今後、ワーキンググループ(WG)を組織し、CO2排出量を削減する行動プログラムを開発する。WGは10月後半に予定される次回のMEPCにおいて、その結果を報告する予定。

 

 ただ、2050年の目標設定では合意したが、それを達成するための法的拘束力を持ったタイムスケジュールは現時点では、示されていない。今後作成する行動計画も目標との連動性が不明だ。IMOは目標達成は、「加盟各国のフレームワーク」によって、削減のレベルと、実現に向けた指導基準(ガイディング・プリンシプル)を定める形を目指すとしている。

 

 ただ、IMOは今回の合意に先駆けて、CO2排出削減規制を導入するに際しての研究を重ねるロードマップを設定している。それによると、国際海運での排出量と、削減のための技術開発等を見定めて、今回の合意についても2023年に改定されるという。50年目標を前倒しするかどうかは、その段階で判断されるとしており、微妙な目標設定でもある。

 

 海運専門家等によると、今回の合意を予定通りに達成するには、今後、2030年代に建造する新造船の多くについて、CO2排出量ゼロのカーボンフリー船にする必要があるという。

 

 今回の採決に際して、米国とサウジが反対したほか、9カ国のグループが、MEPCに対して、今回は結論を出さないよう求める行動もとったという。ある意味で薄氷の決定だったわけだが、IMO事務局長の Kitack Lim氏は「合意は将来への努力を確約する堅固な基盤となる。各国がこの合意に基づいて不断の努力をすることを信頼している」と述べている。

 

 各国の船主協会で組織する国際海運会議所(International Chamber of Shipping: ICS、ロンドン)は、今回の決定を歓迎している。「海運についてのパリ協定だ。 非常に高いレベルでのCO2排出量削減を打ち出した」(ICS事務局長のPeter Hinchliffe氏)。

 

 ICSが規制強化につながるIMOの決定を評価する背景には、国際海運分野の対応をしないと、EUがCO2排出権取引の対象に国際海運を含めるとの動きをしていたことが大きい。EUの強制的規制に組み込まれるよりも、海運独自のフレームワークを作る方向性を維持することを選択したわけだ。ただ、その実効性には不確実性が漂ようことも間違いない。

 

 環境NGOのグリーンピースは、「IMOの合意は行動計画を欠いており、今回の会議での議論も、今後、対策がとられるという信頼性は得られない」と批判している。目標を掲げるだけでなく、目標を実現するための対策の具体化が課題といえる。

 

http://www.imo.org/en/MediaCentre/PressBriefings/Pages/06GHGinitialstrategy.aspx