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CDP、セメント業界グローバル大手13社の気候変動対策を分析。優れているのはインド企業。1~2位を占める。日本の太平洋セメントは13社中11位と低迷(RIEF)

2018-04-16 07:21:10

Cement3キャプチャ

 

   英気候NPOのCDPは、CO2排出量の多いセメント産業の気候変動対応を評価するため、世界的大手13社を対象としたセクター別の調査分析を行った。13社中、気候変動対応がもっとも優れていると評価されたのは、インドのDalmia Bharat社。2位もインド企業。日本の太平洋セメントは13社中11位と、低い評価にとどまった。

 

 セメント業界は、グローバルレベルでは、産業界のうちで鉄鋼業に次ぐCO2排出量が多い。世界全体の排出量の6%を占める。今回、CDPの調査対象となった大手13社は、合計でセメント業界全体の排出量の15%を占める。

 

 ただ、同業界はセメント生成プロセスで膨大なエネルギーを消費し、代替原料や代替燃料への切り替えは難しい状況にある。過去4年間、産業全体で、毎年1%ずつのCO2削減を実施した。だが、CDPは「パリ協定の目標達成のためには、倍以上の削減が必要」としている。ただ、技術的なカベが大きいことから、最終的にはCCSによるCO2吸収が必要と指摘されている。

 

 CDPは、リストアップした13社について、TCFDが指摘する「移行リスク(への対応力)」、「物理リスク(への備え)」、「移行のオポチュニティ」、「気候ガバナンス&戦略」の4つの項目について評価した。

 

Cement2キャプチャ

 

 その結果、13社の中でもっとも総合評価が高かったのはインドのDalmia Bharat。2位もインドのAmbuja Cement。インド企業は、4位Shree Cement、8位ACC、9位UltraTech Cementと名を連ねた。インド企業はクリンカ比率(セメントに占める原料のクリンカ比率)が高く、鉄鋼業や火力発電からの焼却灰、スラグなどを利用し易いメリットもあるという。

 

 上位企業は、各国の規制強化等が事業リスクとなる「移行リスク」への対応や、気候変動に対する企業の「ガバナンス&戦略」の項目で相対的に高い評価を得た。日本の太平洋セメントは、海面上昇や水ストレス等が事業リスクとなる「物理的リスク」への適応力が高く1位の評価を得た。ただ、他の項目はほとんど11位か12位の低評価だった。

 

Cement1キャプチャ

 

 太平洋セメントは、売り上げ比の研究開発費では、HeidelbergCement(ドイツ)、LafargeHolcim(スイス)とともに高い比率を示している。特にHeidelbergCementは、CCSに力を入れており「移行のオポチュニティ」で1位のスコアを得ている。

 

 CDPは、同業界の温暖化対策の有効な手段として、先進国企業では、規模の大きい代替素材の確保や、廃棄物エネルギーの活用、低炭素での生成技術の開発をあげている。代替素材としては、現状のセメントの主要素材であるCO2排出量の多い石灰に代えて、天然ポゾランや焼成クレーなどの自然素材への切り替えを求めている。

 

 排出規制の強化と、都市部での工場規制の広がりが、同業界の取り組みを後押しする期待もある。CDPはそうした規制リスクに直面する同業界企業の資産分析とそのリスクを調査中という。

 

http://b8f65cb373b1b7b15feb-c70d8ead6ced550b4d987d7c03fcdd1d.r81.cf3.rackcdn.com/cms/reports/documents/000/003/277/original/Cement_Report_Ex_Summary.pdf?1523261813

https://www.cdp.net/en//articles/investor/cement-the-invisible-polluter