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日本のバイオマス発電、過剰な認定量。燃料の3分の1は輸入パーム油依存で、調達リスク高まる。石炭火力への混焼はFITの「抜け穴」に。日本自然エネルギー財団が報告書で指摘(RIEF)

2018-04-17 21:53:11

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 公益財団法人自然エネルギー財団は、日本のバイオエネルギー戦略の見直しを求める報告書をまとめた。この中で、輸入材原料のバイオマス発電の認定量が、すでに世界最大のバイオマス導入国のブラジルを上回り、その燃料の3分の1がパーム油依存で、温暖化対策に逆行するリスクがあると指摘した。さらに、石炭火力にバイオ燃料を混ぜる混焼方式が増加、固定価格買取制度(FIT)の「抜け穴」になっていると警鐘を鳴らしている。

 

 報告書は「日本のバイオエネルギー戦略の再構築。バイオエネルギー固有の役割発揮に向けて」というタイトル。同財団の相川高信上級研究員が執筆した。

 

 まず、自然エネルギーとしてのバイオエネルギーの魅力として、すでに2016 年時点で、世界で最も消費量の多い自然エネルギーになっているほか、将来的にも、IEAによると、2060 年に最終エネルギー消費量の 17%を占 めると予測される重要なエネルギー源であると位置付けている。

 

 ただ、日本ではこのところ、輸入燃料を前提とした大型のバイオマス発電の認定量が急増しているとして危惧を示している。経済産業省は2017年3月末までにFITの適用対象として12.4GW ものバイオマスプロジェクトに認定を与えている。さらに半年後の17 年 9 月末時点では16GW 超と膨らんでいる。現在導入量で世界1位のブラジル(14.2GW)、2位アメリカ(12.5GW)、3位中国(12.0GW)を上回る潜在量を抱えているわけだ。

 

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 しかし多くのバイオマス発電が依存する輸入原料(一般木質・農業残渣区分)の中には、世界的な供給不足の懸念や、持続可能な燃料調達の確保に課題が指摘されている。特に、認定量のうち36%に相当する約4.1GW分は、東南アジアなどからのパーム油の供給を前提としている。パーム油の生産を巡っては、先住民の権利侵害や強制労働、プランテーション栽培による生態系の破壊問題、食料との競合問題などが繰り返し指摘されている。

 

 低湿地林地帯をパーム油のプランテーション植林に切り替えることで、従来土壌中に保たれていたメタンやCO2の排出増加や、CO2のシンク機能を持つ森林面積の減少などが生じる。こうした「温暖化加速化効果」を考えると、輸入燃料依存のバイオマス発電は、化石燃料発電よりも 温室効果ガス(GHG)排出量が多くなる恐れさえあるとされる。

 

 日本政府は適正に生産されたパーム油のみを燃料として認める、と説明している。だが、現在、国際認証を取得したパーム油の流通量は世界で年間1200万㌧。日本で認定を受けた発電所が全て稼働すれば、この過半を日本だけが使ってしまう計算となり、現実にはあり得ない。

 

 事は量的な充足可能性だけではない。欧米では、食料利用と競合するパーム油での発電は認めていない。輸入先での人権問題、生態系問題、食料問題等を抱えるパーム油等を主要燃料とする最近の大規模バイオマス発電所の持続可能性は微妙な状況にあるわけだ。欧米の投資家の中には、パーム油で発電する企業は「ESG投資」に逆行するとみなすところも増えているようだ。

 

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 加えて報告書が疑念の目を向けるのが、石炭火力発電にバイオエネルギー燃料を一部混ぜる混焼発電だ。CO2排出量の多い石炭火力にCO2排出量ゼロと計算できるバイオマス燃料を混ぜることで、CO2排出量を減らし、発電量も維持できるというのが混焼促進の論理だ。だが、報告書は「混焼はエネルギー政策上、致命的な問題を抱えている」と断言する。

 

 石炭火力へのバイオ燃料の混焼は、世界的に広く行われている。欧米では、石炭火力への混焼を進めて、倍補比率をほぼ100%にまで引き上げる「石炭⇒バイオ発電」の事例まで出ている。だが、日本での石炭火力でのバイオ混焼は、新設であれば、混焼比率を問われずに、FIT 対象となる政策面でのうまみがある。実際、定格出力 200MW 以上の案件でみると、バイオ比率は10%以下に留まる。つまり、混焼がFITを使うことで火力発電の「隠れ蓑」になっている可能性がある。

 

 混焼発電の現在のコストは、国際的に0.10㌦/kWh 程度。再エネ発電のコストが高い日本でも、12.6〜13.2 円/kW の水準だ。これに対して、FITの買い取り価格は24 円/kWhと高く設定されている。報告書は「発電事業者に過剰な利益をもたらしてい ると考えられる」と指摘している。太陽光発電の初期の段階と同様、政策的に甘い買取価格を設定していることから、「混焼発電バブル」を引き起こしている可能性もある。

 

 報告書は「石炭火力からのフェードアウトは、日本の気候変動対策として、優先的に取り組むべ き課題」ということを明確にした上で、発電所の一部をバイオ燃料との混焼や転換により活用していくという筋道を明らかにすべきだ、としている。

 

 輸入燃料だけではない。国内燃料にも課題はある。FIT 制度では、林地残材の利用促進を企図して、未利用材区分を設け、買取価格を優遇している。その結果、未利用木質区分の認定量は大きく伸び、17 年3 時点で導入量で約 300MW、 認定量で約 500MW まで増加した。林地残材の利用量も2014 年の約 73 万㌧から2016 年の 約 192 万㌧へと、2年で 3 倍近く増えた。

 

 木質バイオマス発電は、太陽光発電に次いで2番目に大きい雇用創出(4.5 万人)を持つ面もある。しかし、問題なのは、これらの国内材を用いたバイオエネルギー発電が、FiT 期間終了後に 自立した電源として市場に統合されていくか不透明な点を抱えたままである点だ。太陽光発電のバブル&バーストを経験したにもかかわらず、再びバイオマス発電でバブル現象を作り出そうとする経産省の政策力はお粗末という以外にない。

 

https://www.renewable-ei.org/activities/reports/img/pdf/20180413/REI_BioenergyStrategy_180413.pdf