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電源開発(Jパワー)、兵庫県の高砂火力発電所建て替え断念。「採算見込めず」と経済的理由で中止。「原発・石炭」固執の政府エネルギー基本計画の「非合理性」を浮き彫り(RIEF)

2018-04-29 22:29:20

Jpower1キャプチャ

 

 電源開発(パワー)は27日、兵庫県高砂市の高砂火力発電所1、2号機の建て替え計画を進めていたが、27日に計画断念を発表した。電力需要の減少で、供給力増強の意義が損なわれ、事業性再評価の結果、採算が見込めないと判断した。今後の石炭火力事業の経済性への疑念を、日本の発電事業者自らが認めた形だ。

 

 (写真は、現在の高砂火力発電所)

 

 石炭火力発電事業が経済的に成り立たないとして、事業から撤退する例は、各国では相次いでいるが、わが国では今月半ばに、四国電力が住友商事とともに計画していた宮城県仙台市での石炭火力バイオマス混焼発電所計画からの撤退を表明した事例に次ぐ。

 

 環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)によると、日本では2012年以降、50基の石炭火力新増設計画が進められ、このうち38基が計画中、8基が稼働中、4基が計画中止だったが、今回のJパワーの高砂発電所の建て替え計画中止で、計画中は36基、中止が合計6基となった。

 

 Jパワーの高砂火力発電所は、1号機が1968年に、2号機が翌69年に建設されたほぼ50年の歴史を持つ亜臨界圧(Sub-C)石炭火力発電所だ。発電量は両方合わせて50万kW。これを、全面的に建て替え、CO2排出量が相対的に少ないとされる超々臨界圧(USC)石炭火力発電とし、発電量も120万kWと倍増させる計画だった。

coal1キャプチャ

 だが、火力発電所はいったん建設すると、数十年単位での長期運用となる。その間の採算が見込めるかどうかが、経済的な見極めの最大のポイントになる。

 Jパワーの渡部肇史社長は27日の記者会見で、「将来にわたって需要が伸びていく見通しが立たない」と、今回の見直しの理由を説明した。「(電力を供給する)関西電力との協議が整わなかった」とも語った。そういう不透明な環境下で、発電所の建て替えに3000億円規模の資金を投じるわけにはいかない、という経営判断に至ったわけだ。

 経済産業省は目下、見直し中の「エネルギー基本計画」でも、原発再稼働と石炭火力優先の従来型のエネルギー政策の基本路線を維持する方向だ。だが、人口減少や省エネ技術の進展、温暖化対策に効果的な再生可能エネルギー発電の進展等によって、経済的な需給関係が変化している現実を見誤っている。

 Jパワーの判断は、まさに、原発と石炭火力を両建てとした従来型路線では、発電側は経済的利益を得られないことを言い当てたともいえる。経済合理性に基づくべき電源選択の政策が、「原発・石炭死守」という”頑迷固陋のイデオロギー”に陥っていることを、発電事業者が自らの経営判断によって、ようやく浮き彫りにしたともいえる。

 Jパワーは、既設の高砂火力発電所は、今後も重要な電力供給力として維持することを明言している。その一方で、再エネ事業を強化するため、新たに「再生可能エネルギー本部」を同日付で新設し、その傘下に水力発電部と、これまでの環境エネルギー事業部を改組した風力事業部を設置することを発表した。

 再エネ事業を組織的に明確に位置付けるとともに、再エネの開発規模拡大と保守・運用の最適化を推進するため、社内の関係部長委レベルを委員とする委員会を、再エネ本部内に設置した。「石炭よりも再エネ」という世界の電力・エネルギービジネスの流れに、ようやく身を合わせる形だ。

 高砂発電所の建て替え計画は、当初は2027年に稼働させる計画で、2014年から環境影響評価手続きが進められていた。アセスの手続きは、環境影響評価方法書まで完了し、次に準備書が提出される予定だった。だが、地元の反対等が強いこともあり、2017年4月25日にはjパワーから準備書提出の延期の意向が示され、それ以降、計画は凍結状態だった。

 KIKOは今回のJパワーの計画断念の判断を歓迎するともに、低効率で環境負荷の高い高砂の既設石炭火力発電所の速やかな廃止を求めるとともに、同社が山口県宇部市で計画中の「西沖の山発電所(仮称)新設計画」についても、中止すべき、と要請している。経営者が将来を見越した経営判断をするかどうかだ。

http://www.jpower.co.jp/news_release/2018/04/news180427_1.html

http://www.jpower.co.jp/news_release/pdf/news180427_1.pdf