HOME |ドイツが今月1日のメーデーに、国内電力需要を再エネ電力だけで2時間30分カバー。今年2回目。再エネ電力優先の送電利用が効果。再エネ比率も36.1%。日本の2030年目標を上回る(RIEF) |

ドイツが今月1日のメーデーに、国内電力需要を再エネ電力だけで2時間30分カバー。今年2回目。再エネ電力優先の送電利用が効果。再エネ比率も36.1%。日本の2030年目標を上回る(RIEF)

2018-05-07 21:30:21

Germanyキャプチャ

 

  ドイツは今月1日の日中、2時間30分の間、国全体の電力需要を再生可能エネルギー電力だけでまかなった。再エネだけで電力需要をカバーできたのは今年の1月1日に初めて達成しており、今回で2回目。ドイツの再エネ発電シェアは、日本がエネルギー基本計画で2030年の目標とする22~24%をすでにに達成しており、さらに拡大する方向だ。

 

 ドイツの1日は休日(メーデー)。経済活動による需要が減少していたこともあるが、連邦ネットワーク機関(BNetzA)のデータによると、順風、太陽の日差しも心地よい同日の午後1時時点で、電力消費量は5万3768MWhに対して、再エネ発電量は風力、太陽光を合わせて5万3987MWhと上回った。

 

 ドイツ政府の経済・エネルギー大臣のPeter Altmaier 氏はツィッターで「すごい。わが国は再生可能エネルギーで国全体の電力をまかなえるわけだ。送電網が再エネ電力を優先的に扱うことで、再エネ電力は十分に流れることができている」と、再エネ発電力を送電網が優先的に扱うメリットを強調している。

 

 germanyキャプチャ

 

 平年ベースでは、ドイツの再エネ電力は2017年で全体供給の36.1%を占めている。前年比で3.8%増だ。太陽光発電にとって有利な日射の多い日や、風力発電に有利な風況が順調な日は、今回のように、全体の電力需要を満たす能力に達していることが確認された。1月1日の際は、風力発電だけで需要の85%をカバーできた。

 

 ドイツは2020年目標で再エネ電力比率を全体の35%とする目標を掲げていたが、すでにその目標は達成している。ドイツの再エネ電力は1990年に他国に先駆けて固定価格買取り制度(FIT)を導入、再エネ電力に対するインセンティブを付与してきた。日本も同制度をまねて導入しているが、もう一つ、ドイツの再エネ普及で大きな役割を果たしたのが、 Altmaier氏が強調する「再エネ電力を送電網の中で優遇する」政策だ。

 

 同国の再エネエネルギー法では、太陽光や風力等の再エネ電力は、送電システムにおいて、通常の火力発電等の電力よりも優先的に送電される取り決めとなっている。したがって、今回のように再エネ100%が一時的に達成されたのは、電力需要よりも供給が多い場合、再エネ発電の電力を優先的に需要家に流すので、再エネ電力だけで需要を満たしてしまうという現象が生じるわけだ。

 

 同政策は、電力網の安定性が損なわれるという状況の場合は適用されないという例外規定があるが、通常は、送電事業者は再エネ電力を優先扱いしなければならない。もし既存の電力会社が、火力発電の電力を優先し、再エネ電力を後回しにするようだと、再エネ事業者は既存電力会社に対して損害賠償を請求できる。消費者負担も増えない。日本もFIT制度をいじくっているばかりではなくて、この制度の導入も真剣に考えてはどうか。