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旭化成、ドイツで風力発電利用しアルカリ水から水素を製造する「グリーン水素」の実証事業開始。2020年度の事業化目指す。CO2回収・再利用技術開発でも、EU勢の一角を占める(RIEF)

2018-05-09 00:50:44

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 旭化成は7日、ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州で再生可能エネルギー電力を用いてアルカリ水から水素を製造する「グリーン水素」の実証事業を始めたことを発表した。州政府と協力して、2020年度の事業化を目指す。

 

 (写真は独ヘルテン市にて行われたオープニングセレモニーの様子)

 

 ドイツでの事業はヨーロッパ統括会社である旭化成ヨーロッパ(AKEU:ドイツ・デュッセルドルフ市)が、NRW州ヘルテン市にある水素関連技術開発拠点「h2herten」で実証プロジェクトを始めた。風力模擬電源を使ってアルカリ水から水素を生成する。システムは入力140kW程度の中規模な実証プラントになる。

 

 現地では、風力や太陽光などの再生エネ電力を用いて水を分解し、水素製造時にCO2を出さない「CO2フリー水素」を生み出す。同社システムの水素に変換するエネルギー効率は世界最高級の約90%(電流密度1㎠当たり0.2アンぺアの場合)。さらに世界トップシェアを誇るイオン交換膜の技術などを応用する。

 

アルカリ水電解設備
     旭化成のアルカリ水電解設備

 

 ヘルテン市のあるNRW州は化学産業が集積し、水素需要が旺盛。ガスのパイプラインも整備されており、製造した水素の輸送も比較的容易という。

 

 同社はすでに日本国内で1万kW級のシステムでの長時間の実証に成功している。今回のドイツでの実証実験は、再生エネの普及が進む欧州の現地仕様で実証的に試すことで、技術開発と並行して市場開拓も進める戦略という。

 

 ドイツは、2022年までに原発廃止を宣言しており、代替策として再生可能エネルギー源からの電力供給を高シェア化することや、CO2削減に対する意欲的な目標を掲げている。こうした目標達成のためには、信頼性の高い蓄電技術の活用が求められる。

 

 旭化成は、すでに世界26カ国、126カ所の生産拠点で使用されている食塩電解システムのメインサプライヤーであり、この技術をベースとして、再エネなどの変動電源に適したアルカリ水電解システムを開発している。同システムは、エネルギー転換効率に優れ、10MWまでの大型化が可能で、単一装置で大量の水素を生産することができる。

 

 AKEUは、2017年11月14日に、EUのプロジェクトである「ALIGN-CCUSプロジェクト」への参加を決めている。同プロジェクトでアルカリ水電解システムを活用してCO2を回収・再利用するCCUS技術を展開する予定。AKEUは、同プロジェクトでも、一貫したCO2回収・転換プロジェクトの設計、建設、運用に重点を置くワーキングパッケージ4のメンバーとなっており、存在感を発揮している。

http://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2018/ze180507.html