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グローバリゼーション、生産拠点移転でCO2排出量増の可能性。各国の研究が指摘(AFP)

2018-05-16 21:42:23

coalキャプチャ

 

【5月16日 AFP】これまで中国とインドで主に行われていた、低価値・エネルギー消費型の製造業が、より低賃金の石炭火力の経済国へ移行することは、気候変動との闘いにとって悪いニュースとなる恐れがある。研究者らが14日に発表した論文で警告した。

 

 (写真は、石炭火力発電所から立ち上る煙=AFP)


 アジアの両大国が「グローバリゼーションの食物連鎖」で上位に移動するにつれ、両国の驚異的な成長を支えた繊維、衣料、電子部品など多くの産業が、ベトナムやインドネシア、その他の国々に移っているが、そうした国々では未だに石炭火力への投資に重点が置かれている。

 

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)の孟靖(Jing Meng)氏が主導した研究論文は「グローバリゼーションの新たな段階」を詳述し、国際貿易が世界で50%拡大した2005~2015年に、途上国間の貿易が3倍の速さで成長したことを明らかにしている。

 

 英イーストアングリア大学(University of East Anglia)の気候変動経済学の教授で、同論文の共同執筆者である关大博(Dabo Guan)氏は、「多くの産業では、製造の初期工程拠点を中国とインドからより低賃金の経済国に移している。この傾向は2008年の世界金融危機以降に加速した」と指摘する。

 

 しかし別の論文では、トルコ、インドネシア、ベトナムその他の第2世代新興経済諸国における石炭火力発電の拡張計画により、中国とインドでの石炭消費の削減努力が帳消しにされる恐れがあることが指摘されている。中国政府とインド政府はそれぞれ、石炭火力発電所の計画を半分以上中止としているが、世界の石炭投資は急増を続けている。

 

 英学術誌「エンバイロメンタル・リサーチ・レターズ(Environmental Research Letters)」に掲載されたこの研究論文によると、例えば、トルコとベトナムにおける新規の石炭火力発電では、両国の石炭によるCO2排出量は、2012年から2030年までにそれぞれ4倍、10倍となることが考えらえるという。

 

 2016年以降、石炭開発に割り当てられた予算がエジプトでは8倍、パキスタンでも2倍近くになっている。

 

 ドイツ・ベルリンの気候変動に関するメルカルトル研究所(Mercator Research Institute on Global Commons and Climate Change)の研究者で共著者のジャン・ステッケル(Jan Steckel)氏は、「再生可能エネルギーコストは下がりつつあるが、それでも世界多くの地域では、安価な石炭に対抗するまでには至っていない」と述べる。

 

 研究論文は、中国が国外の石炭火力発電への投資を増やしていることにも触れている。

 

http://www.afpbb.com/articles/-/3174796?cx_part=top_category&cx_position=1