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責任投資原則(PRI)の活動不活発な「監視リスト入り」候補機関は165。署名全体の約1割。2年間で改善しないと除名へ。リストに日本の機関は入るのか?(RIEf)

2018-05-30 07:47:34

PRIキャプチャ

 

 国連支援の責任投資原則(PRI)が今年から実施する、活動に不活発な署名機関を整理する「監視リスト」入りの機関が165にのぼることがわかった。リスト入りすると2年間に改善できれば留まることができるが、できない場合は除名される。リストに日本の署名機関が含まれるかどうかが注目点だ。

 

 PRIへの署名機関は、現時点(2018年5月30日)で、1974機関と、2000件に迫っている。保有資産額も70兆㌦(約7500兆円)を超えている。膨大な金融機関が「責任投資」に賛同しているわけだが、署名はしながら、十分に趣旨に沿った活動をしていない「ただ乗り組」も少なくないとされる。

 

 そこで、PRIは今年初めに、「説明責任ルール(Accountability Rules)」を定めた。その主な点は、資産保有と資産運用の両署名機関が守るべき最低履行要件(minimum requirements)として、運用資産総額の50%以上にESG投資ポリシーを適用することを求めるというものだ。http://rief-jp.org/ct6/75883

 

 投資ポリシーのルール明確化に加え、署名機関の従業員(内部および外部委託企業も)についても責任投資を担える体制の明確化、組織全体でも責任投資の実行のための政策の明言と、説明責任メカニズムについて管理職レベルでの監督体制の整備等を求めている。年初のルール明確化の後、各署名機関に報告を求めて、適合性をチェックしてきた。

 

 その結果、165機関が責任原則、ESG評価において十分な対応をとっておらず、監視リストに入れる評価になったという。165機関の多くは、資産運用機関で、年金等の資産保有機関の割合は2割程度という。PRIの署名機関の約7割が資産運用機関なので、ほぼその比率に応じた形になりそうだ。正式には、6月中に「ウォッチリスト」に移管される予定という。ただ、リストは公表されない見通し。

 

 PRIのCEOのFiona Reynolds氏は、年初に、「署名機関の10%ほどは、除名される可能性のあるリストに載るだろう」と予測する発言をしていた。ほぼその通りに署名機関の約1割の活動に「疑義」があることになったわけだ。

 

 リストに掲載された機関が直ちに除名されるわけではない。2年間の間に改善策を講じて、署名機関としての資格を回復できるれば、リストから脱することができる。もちろん、リスト掲載をきっかけに金融機関のほうが、PRIから離脱する判断もあり得る。これまでにも、毎年、一定数の署名機関は、会費支払い負担や、署名メリットがあまりない、などの理由で、自らの判断で離脱している。http://rief-jp.org/ct4/72648

 

  現在、1974の署名機関のうち、日本の署名機関は61機関となっている。このうち、資産運用機関は35、資産保有機関が16、サービスプロバイダー10。日本でのPRI活動がそれほど活発とも思えないことから、日本勢からリスト移管機関がでるかどうか。気になるところだ。

 

 ちなみに、これまで、いったんPRIに署名しながら除名(離脱)した日本の機関は、フジテレビ系の年金基金である「フジ厚生年金基金」がある。同機関は、PRIが途中で導入した報告フレームワークを作成できず、除名されている。http://rief-jp.org/ct4/46651

https://www.unpri.org/signatories/who-has-signed-the-principles