HOME |EUの欧州議会、サステナブルファイナンス政策の推進を議決。欧州委員会の法制化提案を側面から支援。ただ、委員会よりも「理念的」で今後の調整が課題にも(RIEF) |

EUの欧州議会、サステナブルファイナンス政策の推進を議決。欧州委員会の法制化提案を側面から支援。ただ、委員会よりも「理念的」で今後の調整が課題にも(RIEF)

2018-06-01 07:16:43

EP1キャプチャ

 

 欧州議会はサステナブルファイナンス促進の決議案を賛成多数で採択した。採択の内容は、①サステナブルファイナンスの共通タクソノミー(Taxonomy:概念の統一化)の確立②サステナブルな金融商品への「グリーンファイナンス・マーク」付与③TCFD勧告に沿う気候情報開示④グリーンボンドのEU共通基準化と公的な認証、などを求めている。欧州委員会も先に、サステナブルファイナンスの4政策の法制化案をまとめており、EUがサステナブルファイナンス政策の具体化に動き出した。

 

 5月29日に開いた欧州議会本会議の決議では、賛成455、反対87、棄権92。圧倒的多数で採択された。決議案は英国のグリーン党所属の欧州議員、Molly Scott Cato氏がまとめ、議会の「Committee on Economic and Monetary Affairs (ECON)」が支持した。欧州議会の決議は、欧州委員会が5月24日に公表した提案とは異なり、法的拘束力はない。しかし、委員会が提出を決めたサステナブルファイナンス関連の法制化を議会が審議する際に、大きな支えになると期待されている。

 

 決議案は、Taxonomyやフィデシャリーデューティー(受託者責任)の法制化や、金融機関の気候リスクのストレステストの義務化、グリーンボンドの共通基準と公的機関による認証の義務化、TCFD勧告に沿った気候関連財務情報開示、サステナブルファイナンスの考えを金融監督等に盛り込むことなど、合計49の項目について政策提言を列記している。

 

 報告とりまとめ役の Scott Cato氏は「今世紀半ばまでに、われわれの経済から化石燃料を減少させねばならないので、それらに依存している資産を金融システムから取り除く必要がある。そうすることでわれわれは、サステナブルな移行期において競争のトップに立てる」と強調している。

 

欧州議会の議決案提案者のMolly Scott Cato氏
欧州議会の議決案提案者のMolly Scott Cato氏

 

 議会の決議は、基本的に欧州委員会がHLEG報告に基づいてとりまとめた行動計画に沿っているが、グリーンボンドの認証を公的機関によるとするなど、市場ベースを軸とする委員会の視点よりも踏み出した部分もある。


 今や、サステナブルファイナンスの「流行りことば」となりつつあるTaxonomyについても、欧州委員会の提案ではタクソノミー整備の対象をまず、6つの特定の環境プロジェクトを明記。事業概念の共通化に加えて、規制当局による金融商品規制や、金融市場の参加者向けの商品開発・販売の際の情報開示などへの適用を目指している。

 

 これに対して欧州議会の決議では、「サステナビリティに関するすべての影響を開示し、他の投資プロジェクトや企業を比較できる指標の基本となるもの」と、幅広く規定している。議会の決議は、こうした視点から、対象となる技術進歩を受けたTaxonomyの最新化を確保することを重視した形だが、実務性を重視する委員会との調整が、今後の審議で議論になりそうだ。

 

http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//TEXT+TA+P8-TA-2018-0215+0+DOC+XML+V0//EN&language=EN