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仙台で計画中だった住友商事による石炭火力発電所計画、バイオマス専焼発電に変更。住民、自治体の反対に配慮。石炭火力推進路線に一石(RIEF)

2018-06-03 21:10:26

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 仙台市の仙台港で石炭火力発電所新設を計画していた住友商事は1日、石炭火力からバイオマス専焼火力に切り替えると発表した。地球温暖化への逆行と周辺環境への影響を懸念する住民や自治体からの批判を受けて計画を変更した。運転開始時期についても、当初目標の2021年上期から2年遅らせて、2023年4月とする。

 

 (写真は、石炭火力発電所計画に反対する周辺住民による抗議行動)

 

 計画中の発電所は、仙台市宮城野区にある仙台塩釜港の工業専用地域でのバイオマス混焼の石炭火力発電所「仙台高松発電所」(仮称、発電容量11万2000kW)。当初は、住友商事と四国電力が共同で事業を推進していたが、地元の理解が得られないことから、今年4月、四国電力は撤退を表明、住友商事の対応が注目されていた。http://rief-jp.org/ct4/78524

 

 住友商事は、事業からの撤退ではなく、発電所を再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の対象となるバイオマス専燃に切り替えて事業を遂行することとした。バイオマス専燃への切り替えは、2017年8月に、環境影響評価(アセスメント)の方法書に対する仙台市長の意見で、石炭混焼比率を計画より引き上げ、30%以上とするよう求められたほか、石炭火力建設の自粛を求める市の行政指導指針が定められたことなどを受けた措置。

 

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  バイオマス専燃の発電所については、住友商事の子会社が過去に手掛けた経験もある。燃料となるバイオマスは大規模発電所となるので、国内産よりも、量的確保が可能な北米産の木質ペレットなどを活用する計画という。バイオマス発電はFITの対象となり安定した売却価格が保証される利点もある。発電電力の全量を東北電力に売電する。

 

 同社では、年内にバイオマス専焼発電所についての環境アセス準備書を仙台市に提出する方針。事業運営については、先に四国電力がパートナーから撤退しており、住商の担当者は「新たなパートナーは白紙の状態。来年中に整備するかどうか決める」としている。場合によると、同社グループだけでの運営になる可能性もあるという。


 今回の計画変更について、仙台市の郡和子市長は「市長意見や市の指導方針を考慮した判断で、高く評価したい。新計画の環境アセス手続きに適切に対応する」と歓迎するコメントを出した。


 今回の石炭火力のバイオマス専燃への転換によって、2012年以降に把握された日本国内の石炭火力建設計画50基のうち、7基が中止・燃料変更となり、8基はすでに稼働となった。残りの35基は建設中もしくは計画中となっている(6月1日現在)。

 

 気候問題NGOの気候ネットワーク(KIKO)は今回の住商の決定について、「大気汚染、隣接地域に存在する蒲生干潟への影響、気候変動への影響などの観点から市民が訴えてきた脱石炭の活動が功を奏した。石炭を燃料とすることをやめた住友商事の判断を歓迎したい」と評価する声明を出した。

 

 ただ、木質バイオマス発電については、「環境・持続可能性の観点から様々な課題もある。今回の計画も、バイオマスの調達先などが明らかでなく、その方法によっては甚大な環境負荷を発生させる恐れがあり、バイオマス火力発電としては大規模で、CO2排出量の情報が石炭混焼計画時から更新されていない」などの課題を指摘している。

https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201806/20180602_12030.html

http://www.kikonet.org/info/press-release/2018-06-01/sumitomo-sendai-coal-cancel