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神戸製鋼、データ不正で当局から家宅捜索。米司法省も捜査に動くとの報道も。にもかかわらず、GPIF採用の日本株ESG指標では「ESG優良企業」の評価のまま(各紙)

2018-06-05 18:40:54

kobelco1キャプチャ

 

 各紙の報道によると、神戸製鋼所は5日、品質検査データの不正改ざん問題で、東京地検特捜部と警視庁の家宅捜索を受けた。特捜部は、同社の改ざんは、組織ぐるみとみて不正の解明を目指す。同時に、米司法省本部も捜査に動き出したという。詐欺罪などの適用を視野に入れているようだ。日米両当局からメスを入れられる神鋼だが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が委託する日本株ESG運用指数では、相変わらず、「ESG優良企業」の扱いを受けていることが気にかかる。

 

  特捜部と捜査二課は、不正競争防止法違反(虚偽表示)の疑いで、神鋼の東京本社(品川区)などを家宅捜索した。神鋼が3月に公表した最終報告書によると、国内外の23の製造拠点で、アルミや銅製品などの強度や耐力などの品質データを長年にわたって改ざんしてきた。それら製品は、公的規格や顧客の求める基準を満たさないにもかかわらず、国内外の600社以上に出荷していた。対象製品は航空機や新幹線などにも使われていた。

 

 神鋼の不正行為には執行役員を含む約40人が関与。元執行役員ら2人は役員就任前に自ら不正を行い、その後も不正が続いていることを認識していたという。改ざん行為は担当者の交代時に引き継がれていたとされるため、特捜部などは組織ぐるみによる不正の可能性が高いとみているようだ。

 

  一方、米司法省は2017年10月、神鋼に罰則付き召喚状(サピーナ)で資料提出を求めていた。サビーナは、司法省が捜査対象に資料提出や聴取を求める手続きのひとつ。製品の出荷先には米航空機大手ボーイング、米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)なども含まれていたためだ。

 

 司法省は、神鋼から提出された関係資料を精査したうえ、関係者の聴取なども求めるとみられる。捜査の担当は、独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正事件などを手掛けた詐欺部が担当しているとみられる、との報道もある。米国の法律関係者は、「当初から詐欺部が捜査する時は、重大事件とみなしている場合が多い。神鋼の厳しい処分につながる可能性がある」と説明している。

 

MSCI3キャプチャ

 

 こうした日米捜査当局の厳しい姿勢にもかかわらず、GPIFが採用している日本株のESG指数では、「MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数」の投資対象銘柄として、神鋼が入ったままだ。MSCIは神鋼の不正問題が発覚した後、それまでの同社に対するAA評価を3段階引き下げてBBとし、その後BBBにまで下げた。だが指数の対象からは除外せず今日に至っている。http://rief-jp.org/ct6/73636

 

 5日現在も、MSCIジャパンのサイトをみる限り、2017年12月時点の構成銘柄表が掲載されており、この半年ほど、変更がないことがわかる。MSCIの不祥事評価は、国連の人権宣言、国際労働機構(ILO)労働の基本的権利宣言、国連グローバルコンパクトなどの国際規範と整合性をとるよう10段階のスコア評価を行なっている、とされる。神鋼については、不祥事発覚で、スコアはもっとも低い「Very severe(非常に厳しい)の一歩手前の「Severe(厳しい)」に留めている。

 

 MSCIはスコアやランキングの方法論も開示しているが、その適用に際して何をもって、「Very severe」でなく、「Severe」にとどまるのかの説明は開示されていない。ESG評価が不確かだとすると、そうした指数に基づいて運用しているGPIFも説明責任を負うことになる。

 

https://www.msci.com/documents/1296102/3556282/2017+Dec_ESG+Select+Leaders+list.pdf/831a09c7-2745-48dd-9b2b-bbcaefd321b5