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カナダでのG7サミットに向け、グローバル機関投資家連合が、各国政府に気候変動対策強化を求める共同声明。各国NDCs目標の強化、排出権取引によるカーボン価格付け策等求める(RIEF)

2018-06-07 14:53:14

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  今週末にカナダのシャルルボワで開かれる先進7カ国会議(G7)に向けて、世界の主要な機関投資家288機関が、気候変動対策をグローバルベースで推進することを求める共同声明を出した。主な内容は①パリ協定目標の達成に向け各国の国別削減目標(NDCs)の強化と迅速な実施②民間部門の低炭素投資加速のため、カーボン価格付け策や化石燃料補助金の停止③気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)勧告に基づ情報開示の促進ーーの3点。

 

  今回の共同声明は、気候変動に関する7つの投資家機関で構成する「Investor Agenda」が主導した。7機関は、Ceres(北米)、AIGCC(アジア)、IGCC(オセアニア)、IIGCC(欧州)、CDP、PRI、UNEP FI。参加した機関投資家の運用資産総額は26兆㌦(約2850兆円)。

 

 参加した主な機関投資家は、米カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)、米カリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)、米ニューヨーク市年金基金を管理する市財務長官、スウェーデン公的年金基金AP1、AP2、AP3、AP7、フランス公務員退職年金基金(ERAFP)、豪職業年金基金HESTA、日本からは、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ国際投信、上智学院の4機関が加わった。

 

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  3つの主要要請のうち、①のパリ協定で合意した各国のNDCsの見直し・強化については、現行のNDCsでは各国の削減約束量を実行しても、協定が目指す世界の気温上昇を2℃より十分に低く抑えるという目標の達成はできないことを踏まえた要請だ。専門家の分析では、現行のNDCsでは、協定の目標達成に必要な削減量の3分の1にしかならないという。NDCsの見直しについては2018年から2020年までの間に実施を求めると同時に、目標に基づく対策の早急な実行を求めている。また2018年中に長期のCO2削減目標の設定を要請している。

 

 ②の民間部門の低炭素投資加速では、パリ協定に適合した気候シナリオを、すべての関連する政策フレームとエネルギー移行政策に盛り込むとともに、カーボンへの価格付け政策を求めている。さらに各国で導入されている化石燃料への補助金制度について、明確な廃止時期を定めてフェーズアウト(消滅)させるほか、石炭火力発電についても世界全体で廃止の目標年限を定めるよう求めている。

 

 カーボン価格付け政策については、国によるカーボン税の課税と、排出権クレジットを売買する市場ベースの取引制度がある。共同声明は「市場ベースのメカニズムは、公的調達制度や、規制、エネルギー目標などの補完的措置と組み合わされれば、もっとも効率的」と指摘し、カーボン税よりも排出権取引制度の導入を推奨している。

 

 ③のTCFD勧告を企業・金融機関の情報開示に取り入れる点については、各国政府が2020年までにTCFD勧告に基づく情報開示体制の整備を進めるよう求めるほか、金融安定理事会(FSB)に対しても、TCFD勧告実施のガイドラインを出すよう求めている。国際標準化機構などに対しても、TCFD勧告を規格の中に取り込むことを要請している。

 

http://aigcc.net/wp-content/uploads/2018/06/EMBARGOED_PRESS_NOTICE__GLOBAL_INVESTOR_STATEMENT.pdf