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英豪資源大手のリオ・ティント、今年中に石炭事業からの撤退完了へ。代替でEV需要の見込めるリチウム、アルミニウム等の事業にシフト。CEOが明らかに(各紙)

2018-06-08 22:18:32

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  英豪資源大手のリオ・ティントが2018年中に石炭事業からの撤退を完了させる、との見通しであることがわかった。同社は石炭からの撤退の一方で、電気自動車(EV)の普及で需要が見込めるリチウム事業に力を入れていく方針という。

 

 日本経済新聞が同社のジャンセバスチャン・ジャック最高経営責任者(CEO)へのインタビューとして報じた。同氏自身が、ここ数年進めていた炭鉱の売却について「2018年中に手続きを終える見通しだ」と述べた。

 

 同社は資源ブームの終息を受けて、事業の選択と集中を進めてきた。事業領域は、銅やアルミニウム、石炭、ダイヤモンドなど多様に展開している。この中で、石炭の売上高に占める割合は2017年12月時点で7%で、5年前から3ポイント低下した。

 

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 石炭事業では18年3月に、最後の大型資産だったオーストラリアの炭鉱権益を22億5000万㌦(約2500億円)でインドネシア企業などに売却すると発表している。この件についてジャック氏は、「(鋼材向けの燃料炭としては)リオの基準から見て一級の資産とは言えず、売却を選んだ」とし、石炭火力発電向けとしては「保有していた資産は世界トップ級だったが、産業として投資しないことを決めた」と意識的に「脱石炭」を選んだと述べている。

 

 日本では新規の石炭火力発電建設計画が相次いでいる。だが、グローバルにみると、世界的な環境規制の広がりを背景に、機関投資家の間ではCO2を多く排出する一般炭事業を手掛ける企業や、石炭火力発電に関連する企業への投資を手控える動きが高まっている。同氏は、そうした投資家の直接の圧力を意識したわけではないとしつつも、「鉄鉱石や銅、アルミなど他の資産との比較で資本の投下先を選択しなければならなかった。投資できないなら売るのが筋だ」との判断を示した。

 

 石炭事業を巡る世界の資源大手の動きを比較すると、地質的に石炭の産出が少ないブラジルが拠点のヴァーレは、売上高の4%程度と依存度が低い。20%程度ある豪英BHPビリトンも5月、三菱商事と保有する豪州の炭鉱の一部売却を発表するなど、資産を選別している。資源大手の石炭離れは確実に進んでいるのだ。

 

 ジャック氏は石炭事業から撤退した後、それに代わる事業として「EV関連の資産を積み増すことに関心がある」と述べた。電気配線に使われる銅や、車体の軽量化で需要増が見込めるアルミニウムについて「我々はすでに市場でいい位置を占めている」としたうえで、「電池に関しては資産がまだない」と課題を挙げ、リチウムやニッケル、コバルト等を今後の投資対象として検討していることを明らかにした。

 

 すでに2017年には、セルビアでリチウムの採掘プロジェクトに着手している。「調査は順調で、約1カ月前に面談したセルビア首相も非常に支援的だった」と明かし、今後数年かけて投資判断を下す見通し。またCO2排出削減の取り組みとして5月に、米アップル、米アルミ製錬大手アルコアと組み、アルミニウム製錬技術の開発を表明している。開発したアルミ材は生産時のCO2排出量が少ない部材として需要者のアップル供給する。

 

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180608&ng=DGKKZO31515570X00C18A6TJ1000