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WWFジャパンによる業種別の温暖化対応状況の評価・分析。第7弾の「医薬品」はこれまでで最高の評価点。業界平均で初の50点台。トップは第一三共、次いでアステラス製薬(RIEF)

2018-06-13 23:33:10

iyaku2キャプチャ

 

 WWFジャパンは、産業ごとの温暖化対策を点検する「企業の温暖化対策ランキング」プロジェクトの第7弾として、「医薬品」業界を対象とした報告書を公表した。それによると、第一三共が73.6点のスコアで一位を占め、次いで、アステラス製薬(71.2点)、エーザイ(69.4点)、塩野義製薬(69.0点)と続いた。医薬品業界は情報開示の評価が高く、総合得点の平均点もこれまでの業界で過去最高点となった。

 

 今回の調査した「医薬品」業界の対象企業は日本企業23社。そのうち、2017年に環境報告書等を発行した21社を選び、その温暖化対策の取り組みを評価した。評価は、企業として温暖化対策の「目標」を設定し、その実績を評価・分析しているかどうかを問う「目標および実績」と、取り組みの状況や進捗などに関する情報開示を行なっているかを問う「情報開示」の2つの観点で、合計21の指標を設けて採点した。

 

 21指標のうち、特に重視する指標は、①長期的なビジョン②削減量の単位③省エネルギー目標④再生可能エネルギー目標⑤総量削減目標の難易度⑥ライフサイクル全体での排出量把握・開示⑦第3者による評価、の7項目。

 

その結果、「医薬品」業界の偏差値の平均値は54.4点で、WWFが2014年以降、実施してきた業種別評価の「電気機器」「輸送用機器」「食料品」「小売り業・卸売業」「金融・保険業」「建設業・不動産業」に比べて、もっとも高いスコアとなった。スコア60以上の上位企業は、第一三共、アステラス製薬、エーザイ、塩野義製薬の4社もそろった。

 

WWF3キャプチャ

 

 業種平均点が50点台に乗せたのは初めて。これまでの最高は「電気機器」の48.7点で、それを5.7点上回った。ちなみに、もっとも低かったのは、「小売業・卸売業」の34.1点、「金融・保険業」も34.9点と低い。

 

 WWFでは、医薬品業界の取り組みが高い評価を得た理由のひとつとして、業界団体の取り組みをあげている。日本製薬団体連合会は「2020年度の製薬企業のCO2排出量を、2005年度排出量を基準に23%削減」という総量目標を掲げている。会員企業はこの業界基準に準拠した取り組みを進め、全体的に底上げされたとみられる。そのためか、スコアのばらつきの程度を示す標準偏差も比較的小さい。

 

 平均的な点数が高い半面で、最上位の企業でも総合得点が70点台前半と、最高得点はやや伸び悩み傾向が出た。その主な要因として、重要7指標の「長期的ビジョン」と「再生可能エネルギー目標」を持つ企業が1社もなかったという。(図2)。業界団体の目標には取り組む一方で、個社別では更なる追加的な行動に欠け、横並びの対応にとどまっていると、WWFは評価している。

 

図2:上位4社と第2、第3、第4グループ(計17社)の重要7指標における平均点数の比較

 同業界のうち、アステラス製薬、第一三共、武田薬品工業等は、2℃削減目標を掲げたパリ協定と整合する排出削減目標の策定手法として、「Science Based Targets(SBT)」を採用している。SBTは当初、「参加企業を2018年までにグローバルで300社に」という目標を設定したが、2018年6月時点ですでに400社以上が採用している。

 

 WWFは、医薬品業界が、「長期的ビジョン」及び「再生可能エネルギー目標」の設定をしていない点について、「世界のESGの潮流を考えると、今後企業にとって、超長期の視点で環境戦略やビジョンを策定することは不可欠。この2つの指標はまさに今、国際社会に求められていること」と指摘し、業界全体での対応を求めている。

 

https://www.wwf.or.jp/activities/data/20180612_climate01.pdf