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メコン河流域諸国によるサブ・リージョナル連合「ACMECS首脳会議」、域内インフラ建設の共通ファンド創設へ。中国の影響力への牽制も(RIEF)

2018-06-19 16:41:50

ACMECS1キャプチャ

 

    タイ・バンコクで開いていた東南アジア・メコン流域5カ国の第8回「イラワジ・チャオプラヤ・メコン経済協力戦略会議(ACMECS)」首脳会議は16日、同地域圏のインフラ建設のための「ACMECSファンド」を2019年にも設立することで合意した。アジアのインフラ建設では中国が「一帯一路」イニシアティブに基づく影響力を強めているが、ACMECS諸国は自前の資金基盤を整備することで、中国の影響力に対する歯止めの体制を構築することを目指す。

 

 (写真は、ACMECS首脳会議で連帯を強調する首脳たち。左から二人目がタイのプラユット・チャンオチャ首相)

 

ACMECSは2003年に地域内の相互協力関係を強化するために設立された。東南アジア諸国連合(ASEAN)の圏内で、メコン河流域の国々がサブ・リージョナルな協力関係を深めることを目指して、多様な分野で共同行動をとっている。前回、2016年にべトナム・ハノイで開いた首脳会議で、協力体制の改善・強化で合意、今回は2019年~2022年にかけてのACMECSマスター・プランを採択した。同プランは、2023年までに各国の連携を強化する「Building ACMECS CONNECT」のビジョンを掲げている。

 

 ACMECSファンドは、同マスター・プランの目玉となるもの。タイが中心になって構想を練り、正式には次の首脳会議で決定するが、各国が自発的に資金を持ち寄り、域内を網羅する道路、鉄道、橋、港湾、空港、内陸水路、海洋運航などを総合的なネットワークとして整備するための資金供給を目指す考えだ。充填を置くのは、域内の東西経済圏でベトナム、ラオス、タイ、ミャンマーを結ぶ「East-West Economic Corridor(EWEC)」と、南部のベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーをつなぐ「Southern Economic Corridor (SEC)」。EWECでは、モノの輸送にかかる時間を現状の5日間から30時間に短縮することを目指す。

 

 ACMECS諸国はメコン河を通じて中国の影響力を直接受けるほか、域内で開発の遅れているラオスやカンボジアに対して中国の影響力が強いという環境にある。中国が主導する「一帯一路」イニシアティブはこれらの国々にとってもインフラ整備のチャンスになるが、一方で中国は政治的影響力を絡めた資金供給を強めているともされる。こうしたことから、タイなどでは、域内のラオスやカンボジアが資金面を理由として中国傾斜を強めることに懸念を深めており、自前の資金基盤の整備を打ち出したとみられる。

 

  ACMECSの資金基盤強化には、 欧米や日本、アジア開発銀行などの国際公的金融機関等も、ACMECS諸国へのインフラ資金の供給を重視しており、ファンドはそうした国際的な資金の受け皿となる可能性もある。また、共通の電力プロジェクトなどの資金調達のため、インフラボンドや、グリーンボンドの発行も想定されている。それらのボンドやファンドを、シンガポールなどの証券市場に上場し、民間投資家からの資金調達も増やす考えのようだ。

 

  東南アジアのインフラ整備に資金を供与するファンドとしては、11年にADBが関与して設立したファンドがある。ASEAN10カ国が出資するが、運用規模は4億8500万㌦(約530億円)で、年間の新規融資は2億ドル程度と小さい。ADBの試算では域内のインフラ需要は、年間600億㌦とされ、到底、需要を満たせない。このため、域内の多くの大型インフラは、日中や欧米など域外からの資金に依存しているのが現状だ。

http://www.mfa.go.th/main/en/news3/6886/90570-BANGKOK-DECLARATION-OF-THE-8TH-AYEYAWADY-–-CHAO-PH.html