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環境省、グリーンボンドの英文プラットフォーム作成・公表。だが、日本語での説明と大きな開き。補助金支給対象ボンドの「緩い」資金使途比率については説明せず(RIEF)

2018-06-20 08:16:34

MOEキャプチャ

 

 環境省はグリーンボンドの発行促進の英文プラットフォーム(Green Bond Issuance Promotion Platform)を作成、開示した。同省が公表するグリーンボンドガイドライン政策と、発行体への補助金給付策等を説明している。ただ、日本語では、補助金対象のボンドの資金使途となるグリーンプロジェクトは50%以上と低い水準に設定しているが、英文では資金使途比率を明示しないなど、恣意的な内容となっている。

 

 環境省のグリーンボンドの英文サイトは、グリーンボンド政策の説明(Policies)と、発行体向けの支援策(Support Program)の説明を主としている。このうち、政策の説明では、同省が2017年に公表したガイドラインの英文版を掲載し、同省のガイドラインは国際的なグリーンボンド原則(GBP)との違いを示している。

 

 それによると、GBPがグリーボンドと認める最低原則(Minimum Standard)の、資金使途などの4コア要素を、環境省は「理解する(recognize)」とする一方、「われわれのガイドラインは、4コア要素すべてを満たさなければならないという立場はとらない(However, the Guidelines do not adopt an “all or nothing” position)と、日本的解釈を重視する立場を説明している。

 

 そのうえで、日本のグリーンボンド市場が成熟していないとして、環境改善効果の評価や、投資家へのレポーティングが十分ではなくとも、調達資金が環境改善効果のある事業に確実に充当されるのであれば、同省のガイドラインに基づいて試行的に債券を発行することは有効、と説明している( it is beneficial for issuers to issue “trial” bonds, based on the Guidelines, as long as their proceeds are allocated with certainty to Green Projects, even if the evaluation of the environmental benefits of the issued trial bonds is imperfect or the reporting of the evaluation results is inadequate)。

 

 一方、同ガイドラインに基づいて、同省が今年度から始めた「グリーンボンド発行モデル創出事業」は、発行体に対して上限5000万円の補助金を配分する。支援策はシンガポールなども取り入れているが、日本の環境省が供給する金額の多さが国際的にも注目されている。

 

 補助金対象のグリーンボンドについては、日本語では、①調達資金の 50%以上が国内低炭素化事業に充当される② 調達資金の使途となるグリーンプロジェクトの件数の50%以上が国内低 炭素化事業である③調達資金の使途となるグリーンプロジェクトが、地域活性化効果が高い事業や低炭素化効果が高い事業である、などの条件を付けている。

 

 ところが英文ではこうしたボンドの条件の説明はない。GBPではグリーンボンドでの調達資金の100%は、グリーンプロジェクトに向けられることを原則としている。これまでの既発行分でGBPに準拠せずに「グリーンボンド」と名乗ったボンドもあるが、その場合でも調達資金の70 ~80 %はグリーンプロジェクトに投じるケースが多く、「50%でもOK」という環境省の支援策は国際的に極めて低いレベルだ。

 

 環境省が発行支援策を英語でアピールする一方で、対象ボンドの「緩い条件」を英訳しないのは、国際的な水準に達していないグリーンボンドに、多額の補助金を付けることへの海外からの疑念を招かないように、との配慮かもしれない。

 

 しかし、欧州連合(EU)などはグリーンボンドの共通基準の制定を進めている。その基本はGBPで、資金の100%をグリーンプロジェクトに投じることが原則になる見通し。国際標準化機構(ISO)でも同様にグリーンボンドの規格化の作業が進んでいる。国際水準と大きく異なる環境省のグリーンボンド支援策は、支援どころか、日本のグリーンボンド市場育成の障害になる懸念もある。ひょっとして、環境省は「グリーンウォッシュボンド」市場を目指しているのだろうか。

 

http://greenbondplatform.env.go.jp/en/

 

 

 

 

 

 

http://greenbondplatform.env.go.jp/en/