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オーストラリアの2018年度輸出額、石炭が鉄鋼を抜いて首位の見通しに。アジアでの旺盛な発電需要の増加を反映(各紙)

2018-07-05 16:26:35

coal2キャプチャ

 

 各紙の報道によると、オーストラリアからの石炭の輸出額が2018年度(18年7月~19年6月)、鉄鉱石を抜き首位になる見通しとなった。地球温暖化対策で欧州を中心に石炭離れが進むが、経済成長が続くアジアの新興国では、依然、石炭への需要が高く、石炭価格は上昇している。輸出額2位に後退する鉄鉱石は重量ベースでは増えるが、価格低迷で金額の減少が影響した。

 

    オーストラリアは2017年の輸出額がすでに過去最高の565億豪㌦となり、前年より35%も増加している。今回の推計は2018年度も同様の傾向が続くことを示している。

 

 日本経済新聞が報道した。それによると、豪産業・技術革新・科学省が7月初旬に公表した資源エネルギークオータリーのデータでは、18年度の石炭輸出額は581億豪㌦(約4兆7500億円)になる見通しで、577億豪㌦の鉄鉱石をわずかに上回った。豪外務貿易省統計では、石炭の輸出が鉄鉱石を上回るのは2009年度以来9年ぶり。

 

 2018年度見通しの石炭の内訳は、鋼材用の原料炭が354億豪㌦、発電用石炭が227億豪㌦となっている。

 

 特に発電用石炭の価格上昇が著しい。国際指標となる豪州産の石炭価格は6月半ば以降、1㌧110米㌦(約1万2100円)台で、50米㌦を割り込んだ16年初めの2倍以上に跳ね上がった。アジアを中心に工業生産が伸び発電需要が高まったことに加え、輸出国インドネシアの供給が天候不良などの影響を受け、需給バランスが逼迫した。

 

 温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」などで環境対策への意識が高まり、「将来の石炭離れを懸念し、新規の炭鉱開発投資が滞っていることも(需給逼迫に)影響している」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)。

 

 豪州産の原料炭も7月以降1㌧約190米㌦で推移。世界で鉄鋼生産が増加する中、高品質な豪州産の需要が高まっている。中国で粗悪な違法鋼材の取り締まりが強化され、高品質の鋼材製造へのシフトが進んだことも、豪州産炭の需要押し上げ要因となっている。

 

 米調査会社S&Pグローバル・プラッツでアジアの石炭市場を担当するディーパック・カナン氏は「豪州は石炭の輸出先を(従来の中国や日本から)ベトナムやフィリピン、タイに広げているが、生産量自体は増やしていない」と述べ、各国からの引き合いが増えたことが価格上昇の一因と指摘する。中国やインドをはじめアジアでは再生可能エネルギーの利用が進むものの、経済成長のペースには追いつかず「今後10年は石炭の需要は増す」とみる。

https://r.nikkei.com/article/DGKKZO32602610U8A700C1FFJ000?type=my#AAAUAgAAMA