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EU中国首脳会議開催、気候変動対策では排出権取引制度の相互協力で一致。家電製品や建物について、共通のエネルギーラベルの設定等でも合意(RIEF)

2018-07-18 22:59:56

EUCHINAキャプチャ

 

  EUと中国政府は16日、北京で第20回EU中国首脳会議を開いた。会議後の共同声明の中で、気候変動問題については、米国がパリ協定離脱後も、EUと中国が一体となってパリ協定の目標実現に沿った温暖化対策を促進することで一致した。またEUが先行する排出権取引制度(EU-ETS)と中国が昨年始動させた中国排出権取引制度(C-ETS)の協力促進での覚書の締結等で合意した。

 

 (写真は、首脳会談で歓談するユンケル欧州委員長(右)と李克強中国首相(左))

 

 両者は気候変動とクリーンエネルギーについては、別途、付属書を設けて、16項目の合意項目を確認した。その中で両者は、トランプ米政権の貿易政策によって国際貿易が危機にさらされているとの認識を共有、グローバルな自由貿易を維持し促進することが、低炭素経済への移行に資するうえで重要であるとの理解で一致した。

 

 両者は気候変動分野での具体的な協力関係を「二国間パートナーシップの主要な柱」と位置付け、9項目の協力分野を明示した。それらは①長期の低温室効果ガス(GHG)排出量戦略②排出権取引制度の総合協力③共通のエネルギーレベル化や最小エネルギーパフォーマンス基準の制定などの省エネ対策④低炭素交通機関の開発⑤低カーボン都市づくりでの協力等を列記している。

 

 このうち、①については、今世紀半ばに向けた長期の低カーボン戦略での協力関係を強化するため、回避策や適応策、さらに能力増強策(キャパシティビルディング)、気候関連法制の制定などを含む技術的な対話の促進を強化することとした。

 

 ②の排出権取引での協力では、2005年に始まった世界最初で最大のEU-ETSと、昨年末に全国ベースでの排出権取引制度の立ち上げを宣言した中国のC-ETSの間で、経験と技法の共有化を進め、費用対効果の優れた気候政策ツールとしての排出権取引制度を重視することで一致した。そうした認識の共有を元に、両者は新たな二国間協力事業を立ち上げることで合意した。

 

 排出権取引制度の相互協力では、経験・知見の交換や専門家による技術的ワークショップの開催等、準備段階的な交流が中心だが、それらの意見・技術のすり合わせの先に、両ETSの相互接続なり、カーボンクレジットの共通化などのテーマが浮上するとみられる。仮に、EU-ETSとC-ETSの相互接続が実現すると、世界のカーボン価格はEU・中国市場の連携によって決まることになる。

 

 省エネ対策で合意したエネルギーラベリングの共有化は、家電製品等において共通ラベルを認証することが想定される。対象は家電製品だけでなく、建物のエネルギーパフォーマンスも国際基準に沿って共有化されるとみられる。日本の家電、建物規格等は、今回のEU・中国合意のラベルへの適合を求められる可能性もある。

 

 再エネ事業についても、相互のベストプラクティスを交換することで合意した。これは太陽光等の再エネ事業、コジェネレーション(熱電併給システム)等の電力網への接続、エネルギー規制や市場デザイン等を含む。特に、よりスマートで、より堅牢性の高いエネルギーインフラの構築で協力関係を強化することでも合意した。

 

 気候変動関連の技術協力では、CO2の回収貯留(CCS)技術を、回収したCO2の利用を組み込んだCCUS(回収利用貯留)に発展させるための技術開発協力を含む、広範囲な技術、科学協力の促進をうたっている。

 

 さらに両者は、途上国の持続可能なエネルギーアクセスや、省エネ、低炭素化促進と、途上国の気候変動対策の能力増強等のために、三国間協力を促進する可能性でも協力する、としている。特に気候変動の影響を受けやすい島嶼部諸国や、最貧諸国、アフリカ諸国等にフォーカスしたキャパシティビルディング等の支援で協調する方針だ。

https://eeas.europa.eu/delegations/china/48424/joint-statement-20th-eu-china-summit_en