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日本の不動産取引の「透明度」向上、前回より順位を5つ上げ14位にアップ。サステナビリティの取り組み強化が貢献。課題は商慣行、情報開示等。米大手不動産サービス、JLLの調査(RIEF)

2018-07-27 16:59:04

JLL3キャプチャ

 

    グローバルに不動産サービス事業を展開する米国のJLLは、各国の不動産取引の透明度を調べた2018年「不動産透明度インデックス」を公表した。最も透明度が高いのは英国。次いでオーストラリア、米国の順。日本は前回より5つ順位を上げ、14位に躍進した。日本の透明度が増えたのは、従来、別計上だった「サステナビリティ(環境不動産ストックの形成)」項目を全体のインデックスに統合したため。環境不動産ストック形成の取り組みを評価された。

 

 JLLは世界80ヵ国で従業員約7万8000人、300超の拠点を展開している。フォーチュン500にも選出されており、2016年度の総売上高は68億㌦、手数料収入は約58億㌦。約4億900万㎡の不動産ポートフォリオを管理し、16年度には1360億㌦の取引を行った。グループ傘下で不動産投資・運用を担当するラサール・インベストメント・マネジメントは、総額601億㌦を資産運用している。

 

 JLLの調査は2年ごとの実施で、今回は、世界100ヵ国、158都市を対象とし、186要素を6つのサブインデックスとして分析した。その結果、1位英国、2位オーストラリア、3位米国の順位は前回調査から変わらなかった。

 

JLL1キャプチャ

 

 上位10位はすべて欧米諸国。12位にシンガポール、13位に香港とアジア勢が入り、日本はその次。アジアでは韓国(31位)、中国(33位)。全体として、アジア太平洋地域は今回、最も透明度が改善した地域という。

 

 日本の透明度は前回2016年版で19位(2.03)、「中高」グループの中間の位置だった。ところが、今回から調査の範囲に、サステナビリティ項目を加えたことから、日本の総合点がかなり改善した。日本の総合スコアは前回より0.05ポイント改善して1.98。

 

 6つのサブカテゴリー別の日本の得点をみると、サステナビリティでは英国と同じ3位にランクされ、またパフォーマンス測定でも5位と上位に位置した。 パフォーマンスの向上は、日本の建築物省エネルギー性能表示制度、不動産オーナーやテナントによる任意のグリーンリース条項に関する具体的指針、エネルギー効率基準の導入など、環境不動産ストック形成に対する取り組みを従来から積極的に進めていることが評価されたという。

 

JLL2キャプチャ

 

 ただ、その他の「規制と法制度」が18位、「市場ファンダメンタルズ」、「上場法人のガバナンス」、「取引プロセス」の各サブカテゴリーではいずれも20位圏外だった。当局による規制や商慣行が相変わらずの状態であることが、さらなる透明性向上の障害になっていることがわかる。

 

 都市別の透明度インデックスでは日本からは東京と大阪が調査対象で、東京(1.98)が26位、大阪(2.22)が30位だった。
 

 JLLリサーチ事業部 ディレクター、大東雄人氏は「世界では不動産テックの普及が透明度の向上をけん引している。だが、日本はその分野の普及が遅れているほか、共益費の内訳明細を開示しないなどの商慣習、伝統的な不動産セクターに加えて、新市場であるオルタナティブセクターに関する情報開示やアクセスに課題がある」としている。
 
http://www.joneslanglasalle.co.jp/japan/ja-jp/Research/JLL_GRETI2018_J.pdf?9f062660-e738-4c53-9405-0fdc39827dbf