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石炭火力発電事業傾斜の大手商社、丸紅。「石炭リスク」を警告する報告書を米研究所IEEFAが公表。突出した石炭投資、「風評被害とコスト負担のリスクを高めている」(RIEF)

2018-08-03 08:43:38

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 米国の エネルギー経済・財務分析研究所(Institute for Energy Economics and Financial Analysis 、IEEFA)は、地球温暖化の進展を防ぐため、グローバルに石炭火力発電事業が見直されている中で、日本の商社、丸紅が日本勢として石炭火力に突出した活動をしているとして「風評被害とコスト負担のリスクを創り出しつつある」と警告する報告書を公表した。IEEFAは、丸紅が一方で進めている再生可能エネルギー事業を評価、早急な事業転換を求めている。

 

 IEEFAが公表したのは「Marubeni’s Coal Problem A Japanese Multinational’s Power Business Is at Risk」と題した英文47ページの報告書。丸紅の活動にフォーカスした分析となっている。

 

 それによると、丸紅は、計画中の石炭火力発電所新設による発電能力(合計13.6GW)では、世界第11位の石炭火力発電所開発事業者となっており、日本の企業では、住友共同電力(7.5GW)、電源開発(J-Power)(4.6GW)、東京電力(4.6GW)、中国電力(4.2GW)に比べて、1企業としてはダントツでウエイトが大きい。「丸紅は石炭火力発電所開発においてトップ企業」と評している。日本の他の商社に比しても、三菱商事は1GW、三井物産はゼロとなっている。

 

 しかし、丸紅がアジアとアフリカで展開するる石炭火力事業 は、地元のキャンペーン団体から強い反発に遭っている点を重視する。「このような団体はよく組織化されており、その要求は通り易い。このため、石炭火力発電事業に深刻な遅れやコスト増加がもたらされている」と指摘している。また石炭火力発電所建設に活用する機器を提供する、ゼネラル・エレクトリック(GE)、シーメンス、三菱重工業等の主要企業も、これまでの火力発電への過剰投資の結果、深刻な苦境に立たされてきた、としている。

 

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 IEEFAのアナリストのサイモン・ニコラス氏は、「多くの競合相手が世界的なクリーンエネルギーへの移行を受け入れている中、丸紅が計画している石炭火力発電量は日本の他社のそれの2倍に近い。同社は再生可能エネルギー部門においても着実に前進しているが、衰退傾向にある石炭火力発電産業を引き続き重視しており、被る必要のない風評被害とコスト負担のリスクを創り出しつつある」と指摘している。

 

 報告書によると、丸紅は再エネ市場において既に実績を築いている。アジアでは、台湾と日本の洋上風力発電市場は急速に拡大しつつあり、丸紅がヨーロッパ市場で築いた経験を活用することができる。同社が太陽光発電において既に知名度を上げている中東では、太陽光エネルギー事業が目覚ましい伸びをみせている、と述べている。

 

 国際エネルギー機関(IEA)の推計によると、2040年までの毎年、全世界で160GW分の再エネ施設が増設されれば、再エネによる発電能力への投資額は総投資額の3分の2を占める。これに対し、石炭火力発電の増設による発電能力は毎年わずか17GW。「この流れに逆行することは、愚かであるだけでなく、投資家、市民社会、政府の目にはますます有害でもある」(ニコラス氏)。

 

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 丸紅は、今日までの再エネ事業での実績を踏まえ、グローバルなエネルギー転換を全面的に受け入れて事業転換するならば、世界でクリーンエネルギーの第一人者として認められる可能性はある、とも指摘している。そうなるためにも、戦略面で課題の多い石炭火力発電開発事業を放棄する必要がある、と断言している。

 

 またグローバルに温暖化対策が求められる中、丸紅の現在の経営路線は、現在の株主、および将来の同社に対する投資家の評判を落とすリスクを負っている、と警告。安価な再エネが石炭産業技術に大打撃を与えており、最近は日本の銀行および投資家も、石炭産業に背を向ける国際金融機関に追随する動きを示していることも強調している。

 

 特に、日本生命と第一生命が、石炭関連企業への投融資を見直し、投資額を引き揚げる姿勢を示したことを指摘。両社が丸紅への融資債権者の上位10社に入っていることから、他の債権者への影響もありうるとの見方を示している。

 

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 報告書は、「現在、世界でも日本でも、金融機関や企業は脱石炭火力に向かっている。丸紅は取り残されないよう注意しなければならない」と述べている。

 

 すでに日本の主要商社は、一般炭鉱部門から撤退しつつある。三菱商事はオーストラリアの一般炭鉱の株式売却に動いているほか、三井物産は2017年、環境への懸念から新規の一般炭鉱への投資を計画が白紙であると発表している。双日も一般炭事業を縮小する計画を示している。丸紅自身も、一般炭鉱運用への投資を打ち切っている。

 

http://ieefa.org/wp-content/uploads/2018/07/Marubenis-Coal-Problem_July-2018.pdf