GRIと国連グローバルコンパクト、SDGsの「実務ガイド」を共同開発・公表。三段階のステップ方式。取り組みやすい活動ではなく、企業が取り組むべき優先順位の高い活動に照準（RIEF）
2018-08-07 07:57:27
サステナビリティに関する国際情報開示基準を提供するNGOの「Global Reporting Initiative (GRI)」と、企業のサステナブル経営を宣言する国連のグローバルコンパクト（UNGC） は、企業が国連の持続可能な開発目標（SDGs）に与える影響を自ら測定し、報告し易くするための「実務ガイド（A Practical Guide）」を共同で作成、公表した。
公表された測定・報告ガイドは、「Integrating the Corporate Reporting: A Practical Guide（統合企業報告：実務ガイド）」。UNGCが企業に求める、人権・労働権・環境・腐敗防止等の10原則をはじめ、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」、さらにGRIのサステナブル報告基準の3つを基本的にベースとしている。
ガイドは、新たな報告フレームワークを作るものではなく、上記の３つの既存の枠組みを踏まえて、SDGsを各企業の現在のビジネスとレポーティングのプロセスに3つのステップで組み込むことを求めるものとなっている。
まずステップ1は、企業が活動し、報告する上で、もっとも適したSDGsの目標の確認と、インパクトの優先順位をつけるプロセスに焦点を合わせる。ステップ2では、対象となるSDGsのテーマに対するビジネスとしての目標を立て、情報開示を選択し、実績を分析する。ステップ3は、SDGsパフォーマンスの改善と報告に関する予想とガイダンスを提供する、というものだ。
3つのステップはそれぞれ、3つの主要な行動を求めている。たとえばステップ1では、①SDGsとその目標の理解②SDGs目標のうち主要な優先順位の開示③SDGs関連レポーティングの開示内容の明確化、などとなっている。
各ステップは、必ずしも、順を追って進められなくても、状況に応じて適用されればいいとしている。しかし、ガイドは、企業の規模や産業分野、地域を問わずすべてのビジネスに適用されることを求めている。ガイドの主な使用対象者にはレポーティングの担当者をターゲットとしているが、企業のサステナビリティに関連する他の専門家たちにとっても有用、としている。
UNGCやGRIはこれまで、持続可能な開発のための世界経済人会議（WBCSD）とともに、企業がSDGsに取り組む基本姿勢をまとめた「SDG Compass」を開発、公表してきた。今回の実務ガイドはそれらの成果を踏まえて、より詳細にSDGs目標の企業にとっての優先順位の確認ができるようなアプローチを示している。SDG Compass は5段階のステップを示したが、今回は3ステップと簡素化している。
ガイドの基本的な姿勢は、各企業がSDGsに向き合う際、もっとも取り組み易いものを優先する傾向が強いが、そうではなく、企業の本業の活動にとってもっとも優先順位の高いテーマへの取り組みと、活動報告を求める形となっている。さらに、企業にとってSDGs活動に伴うポジティブ、ネガティブの両面の影響をレポートすることも求めている。
国連の推計では、SDGsが掲げる17の目標は、2030年までに総額12兆㌦の富と収入を上げると期待されている。社会的目標の達成と、ビジネス成果の増大が、世界中の中小企業から大企業までを、目標達成に向けて取り組ませるためのインセンティブになると見込まれている。ただ、2017年の活動状況のレポートでは、見込み通りの展開には程遠い状況になっている。
GRIの代表であるTim Mohin氏は「効率的な企業の報告こそが、透明性と説明責任を通じて、信頼を構築し、適合する投資を拡大するカギを担っている。今回のガイドは、各企業がSDGsに関して、単に自社の活動やプログラムをマッピングする現在の傾向から一歩踏み出させることをサポートするものだ」とガイドの意義を強調している。
UNGCのCEOで代表でもあるLise Kingo氏も「SDGsの目標に対する活動、貢献、インパクトをレポーティングすることで、各企業は、政府や投資家、他のステークホルダー等が必要とする情報を提供することができ、それによって社会に対する説明責任を高めることができる」と述べている。
https://www.globalreporting.org/resourcelibrary/GRI_UNGC_Reporting-on-SDGs_Practical_Guide.pdf
Research Institute for Environmental Finance