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トランプ米政権、石炭火力発電規制の権限を州政府に委ねる方針へ。閉鎖発電所の復活も視野。売電事業者には石炭電力の優先購買を求める。中間選挙での石炭関連票田の確保狙いか(RIEF)

2018-08-20 20:39:24

Trumpキャプチャ

   トランプ大統領が近く、米国の気候変動対策を抜本転換し、気候変動対策をどのように実施するか、あるいは対策を打つかどうかを含めて、各州の判断に委ねる方針を打ち出す見通しとなった。州によっては石炭火力規制を撤廃することも認めることになる。さらに既存の石炭火力発電所に課せられる排出規制強化ルールの緩和も盛り込むという。11月の中間選挙を前にして、石炭産業の多い州の支持を取り付ける狙いもあるようだ。

 

 米紙などの報道によると、早ければ21日に予定される西バージニアでの大統領の演説で明らかにされる可能性があるという。トランプ大統領は就任以来、オバマ前政権が推進してきた石炭火力発電を州段階でフェーズアウトするClean Power Plan(CPP)計画を差し止めるなど、「石炭との戦争」を強調してきた。今回の政策提案は、今月初めに明らかにした自動車に対する燃費規制強化の凍結策とともに、反温暖化対策の中でももっとも強力なものになりそうだ。

 

 CPP計画は、現在、最高裁で審議され、履行が中断された形となっている。事実上の凍結である。これに対して、カリフォルニア州やニューヨークク州など、気候変動対策を推進してきた州では、連邦の規制よりも強い温暖化対策を州法で導入している。今回予定されるトランプ大統領の「州の判断」への切り替えは、一見、カリフォルニア州などの政策にとってもプラスのように映る。だが、州によっては石炭火力発電を復活させることも認めようというわけで、規制継続を堅持する州の努力を水の泡にする意図が込められているともいえる。

  さらに現政権の計画では、電力売電事業者に対して、石炭火力による電力を優先的に購入するよう要請する対策も含まれているという。しかし、電力事業者の中にも、旧式の石炭火力発電を改修せず、操業を再開して売電を促す政策に対しては、電力網の安定性に影響するとの懸念の声もあるようだ。

 

 オバマ政権時代の環境保護庁の大気汚染対策の責任者だったJanet McCabe氏は「先の自動車の燃費規制凍結案と今回の石炭火力復活案は、米国の温室効果ガス排出量の二大排出源への緩和であり、米国の排出量の半分以上を占める。人々は何度、もっとも暑い夏に直面していると聞き、何度もハリケーン襲来を体験しないとこの問題を理解できないのか、私にはわからない」と半ばあきらめたようなコメントをしている。

 

 環境団体のClean Air Task ForceのメンバーConrad Schneider氏は「新たなトランプ政権の計画は、電力市場での石炭火力発電の競争力を強化し、再生可能エネルギーなどの電力に取って代わる可能性が高まる。そうなると温室効果ガス排出量は再び増大し、気候変動の加速につながるだろう」と危惧している。

 

 一方で、 石炭産業の業界団体であるAmerican Coalition for Clean Coal Electricityの代表のMichelle Bloodworth氏は「今回の政権の対応は、賞賛に値する。オバマ前政権の政策は非常に厳しすぎた」と歓迎の意向を示している。ただ、同業界団体の推計でも、現在の米国の石炭火力発電所のうち40%は閉鎖か、閉鎖の準備をする必要がある、としている。

https://www.nytimes.com/2018/08/02/climate/trump-auto-emissions-california.html