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フランスのユロ環境相、突然の辞任。ラジオ番組で表明。温暖化政策、原発政策で閣内対立、孤立化。マクロン政権に打撃(RIEF)

2018-08-28 22:49:11

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 フランスのマクロン政権に亀裂が入った。環境相のニコラ・ユロ(Nicolas Hulot)氏が突然辞任を表明したためだ。ジャーナリストで環境保護主義者で知られるユロ氏は、国営ラジオの番組で、フランスの気候変動政策の推進と、原子力からのエネルギー転換を求めたが、閣内で孤立していたと明かし、これ以上、環境相にとどまる理由はもはやないと宣言した。

 

 (写真は、マクロン政権に「Au revoir(さよなら)」とも言わず、去ったユロ氏)

 

 ユロ氏は、マクロン政権の気候変動政策のかじ取り役を担ってきた。しかし、国際放送ラジオ(France Inter)の番組で、「私はこれ以上、自分にウソをつくことはしたくない。閣内に私がいることで、われわれが直面するチャレンジを取り組んでいるかのようなイリュージョンを(世の中に)与えなくない。だから政府を去ることを決意した」と述べた。

 

 ユロ氏は自らの辞任の決断について、マクロン大統領にも、エドゥアール・フィリップ首相にも話していないと明らかにした。大統領らには寝耳に水の辞任表明ということになり、パリ協定に基づく温暖化対策を政権の重要な柱に据えているマクロン政権にとっては大きな打撃になったことは間違いない。

 

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 同氏は昨年5月のマクロン政権発足とともに環境相を務めていた。しかし、EUカナダ自由貿易協定の締結と、フランスの原発比率を2025年までに現行の75%から50%に引き下げるという前政権から引き継いだエネルギーミックス政策の扱いで閣内対立が続いていた。ユロ氏は、公約通りの引き下げを主張してきたが、フィリップ首相は50%への引き下げに慎重な姿勢をとり、ユロ氏は孤立化していた。

 

 さらに同氏は今夏、各国を襲った熱波、異常高温といった気候変動の顕在化に直面しながら、明確な気候変動対策を打ち出せないことに、「私は仕事をしているのだろうか、だれがやるべきなのか」等と自問したことも明らかにした。また、この夏の閣僚会議に、彼が招かれず、狩猟ロビイストのティエリー・コステ(Thierry Coste)氏が参加していた事実を知り、直ちに政権を去る決意をしたとしている。

 

 ユロ氏は「(ロビイストが閣僚会議に同席するということ)これは民主主義の問題だ。だれがこの国で権力を持ち、国を治めているのかだ」と指摘した。コステ氏は、クレディ・アグリコルやアムンディなどの金融機関を経て、現在は資産運用会社の会長を務める一方で、自然保護主義者のユロ氏と対立する立場の狩猟団体の会長の座にある。長年、フランスの保守政権とのコネクションを維持してきた人物とされる。

 

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 ユロ氏は「私の辞任が、世界の現実を前にして、フランス社会がしっかりと内省するきっかけになることを期待する。くれぐれも、私の辞任を政治的ツールとして利用しないでもらいたい」と締めくくった。

 

 大統領府のスポークスマンであるBenjamin Griveaux氏は、ユロ氏が指摘した温暖化対策や原子力政策についての政権内での対立については触れず、「ユロ氏は、大統領と首相には自らの決断を事前に話しておくべきだった。それが最低限の礼儀だ」と言い放ち、ユロ氏との対立が決定だったことを裏付けた。

 

 野党共和党リーダーのローラン・ヴォキエ氏は「ユロ氏は、多くのフランス人が感じているのと同様、マクロン氏に『裏切られた』という思いに至ったのだろう。マクロン氏は強い約束を表明するが、その約束が守られることはないということだ」と政権を批判している。

 

どうする?マクロン。
どうする?マクロン。

 

 前政権の環境相を務めたセゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Royal)氏は「ユロ氏の辞任の選択を尊重する。私の経験からも環境のための闘いは非常に難しく、厳しいものだ。フランスは(気候変動対策に反対する)勢力と闘う、気候リーダーであり続けねばならない」とツィッターでコメントした。

 

 グリーン党のYannick Jadot氏は「ユロ氏の辞任は、マクロン政権が真の環境政策を備えていないことの結果だ」と政権を断じた。