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「気候変動対策に、労働者やコミュニティ対応を統合すべき」、PRIや国際労働総連合(ITUJ)が「移行期」のドラフト案で指摘。TCFD適合にも社会的対応を求める。12月に最終報告(RIEF)

2018-09-07 18:11:08

PRI2キャプチャ

 

  国連支持の責任投資原則(PRI)や国際労働総連合(ITUJ)などは共同で、気候変動対応に基づく投資判断にESG要因を取り入れる際、労働者やコミュニティが気候変動によって”座礁(Stranded)“しない配慮を求めるガイダンス案をとりまとめた。同時に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の報告に沿った対応を社会的分野にも適用を拡大するよう求めている。

 

 ガイダンス案はパリ協定で明記された「just transition」の表現を引用、「Just Transition Project(移行計画)」と名付けられている。すべてのクラスの資産を対象とした投資に適用するものとしている。同計画は、London School of EconomicsのGrantham Instituteとハーバード大学のInitiative for Responsible Investment (IRI) 、それにPRI、 Friends Provident 、 Surdna foundationsらの協力によって推進されている。

 

 ガイダンス案は、前UNEP Inquiryのサステナブルファイナンス担当だったNiclk Robins氏(現Grantham Institute教授)と、 Capital Stewardship Program at Service Employees International Union (SEIU)の担当者だった Vonda Brunsting氏 、ハーバード・IRIのDavid Woods氏がまとめている。 ドラフト案は12月に、最終報告書として公表される予定。

 

 それによると、TCFDを含め、気候変動問題では社会的課題への認識が不足している、と指摘し、特に、労働者やコミュニティが受ける影響への関心が不足している、と問題提起している。

 

 そして投資家の役割として、「資産を適正に保全するスチュワードシップの役割とともに、資本の配分者として、公的政策に反映させる重要な役割を担っている」と位置付けている。気候変動対策を投資判断に盛り込むとともに、その持続可能性とInclusive(包摂性)を求めている。

 

 こうした問題意識を踏まえ、「気候変動に伴う社会的課題を効果的に対応できないと、政治的な不安定性や、経済活動の停滞、気候変動目標を達成に向けた取り組みの低下などの、新たな投資リスクを生み出す可能性がある」と強調している。

 

 そのうえでガイダンスは、投資家が取り組むべき「次のステップ」として、①責任投資や気候変動対策に社会的な「Just Transition」の要素を統合する ②すべての投資資産を通じた投資サービス活動に社会的要因を統合する③投資家は企業をそうした活動に取り込む④コミュニティの再生に資本を投下するチャネル形成のイニシアティブに参画する⑤TCFDのフレームワークとその拡大版で、社会的課題を含めて企業や金融機関等による情報開示を促進するーーなどを盛り込んでいる。

https://www.unpri.org/