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年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、炭素効率性を活用した「グローバル環境株式指数」採用を正式発表。S&Pの単独分と日本取引所との共同分の2件。運用額1兆2000億円(RIEF)

2018-09-26 00:45:51

GPIF13キャプチャ

 

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)はESG株運用の第二弾として2件の「炭素効率化(カーボン・エフィシェント)指数」を採用した、と正式発表した。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(S&P DJI)と、日本取引所グループ(JPX)が共同開発した、内外の株指数で、同業種内で炭素効率性が高い企業とCO2排出量などの情報開示を行っている企業の投資ウエイト(比重)を高めているのが特徴。運用額は両指標合計で1兆2000億㌦の見通し。

 

 GPIFの高橋則広理事長は「今回採用したグローバル環境株式指数が、様々な企業が炭素効率性の向上や情報開示に取り組むための一つのきっかけになれば幸い」とのコメントを出した。GPIFは昨年7月から日本株の3指数でESG投資を行っており、今回の投資を合わせるとESG投資総額は約2兆7000億円になる。http://rief-jp.org/ct4/82993

 

 GPIFは昨年11月~今年1月にかけて、グローバル環境株式指標の公募を実施。17指数の提案を得ていた。この中から審査の結果、ポジティブスクリーニング、開示促進、評価会社のガバナンス、評価対象ユニバースの広さなどを尺度にして、今回の2指標を選定した。

 

炭素効率性の評価手法
炭素効率性の評価手法

 

 炭素効率化を重視する指標としては、石炭採掘企業や電力会社などの環境負荷の大きい企業を投資対象から除外するDivestment方式もある。しかし、GPIFは「ユニバーサルオーナー」を志向することから、投資除外のDivestment方式よりも、改善度を評価するポジティブスクリーニングを重視し、業種内での相対評価を行う指数を選定した。

 

 指数は、S&PとJPXが共同開発した国内株用のS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数と、外国株を対象としたS&P グローバル大中型株カーボン・エフィシェント指数。

 

 いずれも、 同業種内で炭素効率性が高い企業とCO2などの温室効果ガス排出に関する情報開示をしている企業の投資ウエイト(比重)を高めている。また、業種毎の環境負荷の大きさに応じて、投資ウエイトの格差を調整することで、環境負荷の大き い業種ほど、炭素効率性の改善や情報開示のインセンティブが大きくなる仕組みを取り入れている。

 

S&P/JPX指数のパフォーマンス
S&P/JPX指数のパフォーマンス

 

 国内株用のS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数の場合、採用対象は、東証1部上場企業全社(一部の低流動性銘柄等を除く)で、一般的なESG指数に比べて、幅広い企業を対象にしている。国内株ユニバース(2103銘柄)、外国株ユニバース(2584銘柄)を、1日平均売買代金による流動性基準、情報開示基準、不祥事基準の3条件でスクリーニングし、投資対象に、それぞれ1694、2164銘柄を選んだ。

 

 炭素効率性(カーボン・エフィシェント)の評価手法は、S&P子会社のTrucostが開発した。業種ごとの10段階(十分位数)の炭素効率性の閾値を求め、さらに3段階の産業セクターのインパクト・ファクターを加味し、個別銘柄の構成ウエイトを決める。同じ段階(十分位数)の企業でも高インパクト業種に属す企業ほど投資ウエイトは大きくなる。

 

カーボン・エフィシェンシー指数とTOPIXの比較
S&P/JPX指数とTOPIXの比較


 こうした評価によって、ベンチマークのリスク・リターン特性を維持したまま、炭素効率性が高く(売上高当たりの炭素排出量が少なく)、炭素排出量に関する情報開示を十分に行っている企業のウェイトを引き上げる一方で、炭素効率性が低く(売上高当たりの炭素排出量が多く)、情報開示を十分に行っていない企業のウェイトを引き下げる。その結果、指数全体の炭素排出量を減らすことが可能になるという。

 

 指数の炭素効率化性は、S&P/JPX カーボ ン・エフィシェント指数の場合、親指数であるTOPIX並みのリスク・リターンを確保しながら、ポートフォリオの炭 素効率性は24.5%改善する。またS&Pグローバル大中型株指数カーボン・エフィシェント指数の場合の炭素効率性は 40.90%改善するとしている。

 

https://www.jpx.co.jp/news/1044/nlsgeu000003kebq-att/deta_j.pdf