温暖化で海氷減少の北極圏、貨物船の航行も成功。デンマークの船が37日間で走破。スエズ運河ルートより10~15日短縮(RIEF)
2018-10-01 10:03:25
温暖化で北極圏を覆う海氷の減少が続いているが、デンマークの貨物船が、東アジアから北極圏を通ってロシアのサンクトぺテルスブルグへ荷を運ぶ航海に成功した。従来のルートより10~15日も航行日数を短縮できたという。温暖化は北極海の生態系にマイナスの影響を及ぼすが、経済活動には「プラスの効果」もあることを示した形だ。
(写真は、北極圏航海に成功してサンクトペテルスブルグ港に入港したデンマークの貨物船)
北極圏航海に成功したのは、世界最大の海運会社のデンマークのA.P. モラー・マースク(A.P. Moller-Maersk)社の「Venta Maersk号」。同船は8月22日に冷凍魚を積んで、東シベリア沿岸部のウラジオストックを出港し、9月28日に、37日間でロシア西部のぺテルスブルグ港に入港した。
モラー・マースク社の最高技術責任者(VTO)のPalle Laursen氏によると、「今回の航海は一回限定の航海だが、非常に有益な航海上の経験となった」と評価している。東アジアと欧州を結ぶ北極圏航海は昨年8月にロシアの砕氷能力を持つタンカーが、天然ガス(LNG)をノルウェーから韓国まで19日間で運んだ実例がある。
東アジアと欧州をつなぐ一般的なルートであるスエズ運河経由の航路は2万1000kmあるが、今回の北極圏「北部ルート」は、1万2800kmへと4割近く短縮される。この距離の短縮は航行日程としては10~15日分に相当するという。また北極圏ルートには、カナダの島嶼部を経由する「北西ルート」もあるが、今回の「北部ルート」は海氷が少ない分、それよりも早く到達できたという。
タンカーの場合、ロシアの北極海に面した油田のヤマル油田から欧州をつなぐ砕氷LNGタンカーなどがすでに開発されている。だが、貨物船の場合、砕氷能力を高める投資が必要となり、コストアップが課題だ。また北極圏の海氷が少なくて航行可能な期間は約3カ月と限られている。
こうしたことから、モラー・マースク社は「現在のところ、北極ルートはこれまでの東西ルートにとって代わるほどの商業ベースの航路としてはみていない」と説明している。今回の冷凍魚類の運送のように、個別の運航要請に応じて対応する考えを示している。
37日間の航海を通じて、Venta Maersk号はロシアの海運当局と緊密な定期的交信をとり続けた。また万一の場合に備えて、砕氷船を保有する企業とも予防的対応についての交信を続けたという。
https://www.maersk.com/news/2018/09/28/maersk-concludes-trial-passage-of-northern-sea-route