HOME8.温暖化・気候変動 |東北電とグレンコア、発電用石炭価格交渉で妥結。16%高の㌧当たり109.77㌦。「110㌦」時代を象徴。先進国の脱石炭の動きの一方で、中国、インド等の「石炭依存」の強さを反映(各紙) |

東北電とグレンコア、発電用石炭価格交渉で妥結。16%高の㌧当たり109.77㌦。「110㌦」時代を象徴。先進国の脱石炭の動きの一方で、中国、インド等の「石炭依存」の強さを反映(各紙)

2018-10-04 15:18:52

glencore1キャプチャ

 

 各紙の報道によると、東北電力とスイスの資源大手グレンコアは3日までに、発電用石炭(一般炭)の10月からの年間契約価格を1年前に比べ16%上げることで合意した。1㌧当たり109.77㌦という。石炭のスポット価格は今夏には、110㌦を付けており、パリ協定に基づく脱石炭化の動きが先進国で進む一方、中国やインドを中心とした途上国での旺盛な需要で、石炭価格は上昇基調にある。

 

  東北電力とグレンコアの合意価格は、国内の他の電力会社にとっての参考指標(ベンチマーク)となってきた。だが、今年4月から1年分の年間契約では合意ができず、参考指標が宙に浮く異例の事態が続いていた。今回の決着でベンチマークが復活、他の電力会社も同水準での値決めが進むとみられる。

 

 石炭価格が110㌦台に迫っただけでなく、原油や液化天然ガス(LNG)などの化石燃料価格も上昇している。石炭価格の上昇は、先進国市場では、石炭火力発電所の操業コスト上昇につながり、脱石炭を加速させる要因になるとみられる。だが、途上国ではエネルギー需要の増大から、引き続き石炭需要は根強い。

 

 今回の両社の交渉は、オーストラリア産一般炭の2018年10月~19年9月分が対象。㌧当たり109.77㌦の水準は、10月からの契約分としては7年ぶりの高値となる。110㌦台に迫る高値で妥結した背景には、アジア市場で豪州産一般炭のスポット(随時契約)価格が高止まりしていることが影響した。

 

 実際、足元の一般炭スポット価格は、すでにトン当たり110㌦台で推移しており、前年同期に比べ2割高いという。東北電力とグレンコアの交渉がまとまらない中で、7月下旬に四国電力が18年4月~19年3月分をトン当たり110㌦とすることでグレンコアと合意した。今年度入りしてすでに4カ月近くが過ぎていたため、同価格水準を参照する動きも出たが、他の電力では、これまで様子見が続いていたという。

 

 しかし、スポット価格の高騰は続き、今夏には12年以来の高値をつけた。また、中国は、2016年に石炭依存体制の脱却を宣言し、新規の石炭火力の建設中断を宣言したが、国内のエネルギー需要の増大を受けて、今年に入って、一部で石炭火力の新設を認められるなどの動きが表面化している。また米国のトランプ政権が石炭産業にてこ入れをしていることも価格上昇要因になった面は否めない。さらに、今年は、世界的な猛暑で発電需要が膨らんだことも要因といえる。http://rief-jp.org/ct10/81678

 

 グレンコアは日本の発電所に適した高品位の一般炭で高いシェアを握っている。東北電は買い手の代表として交渉してきたが、結局、グローバルな市場需給を反映して、売り手優位な条件で妥結したといえる。

 

 石炭価格の上昇は、石炭火力発電のコスト上昇につながる。一方の再生可能エネルギー発電の発電コストは、技術革新の進展や大規模化等によって低下傾向が続いており、石炭火力と再エネ発電の経済性ギャップは縮小に向かっているともいえる。その一方で、現下の石炭需要は途上国を中心とした電力需要の増大を反映していることから、CO2排出量の減少は当分見込めないともいえる。

http://www.glencore.com/