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丸紅の国分文也社長、「新規石炭火力発電からの原則撤退」方針の背景を説明。「新規石炭火力事業は再エネに比べ儲かるビジネスではない」と言明(各紙)

2018-10-10 21:51:38

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  大手商社の丸紅は9月半ば、新規の石炭火力発電事業から原則撤退を宣言した。同社の国分文也社長はメディアとのインタビューで「石炭火力には限界があり、成長分野は再生エネとガス火力発電だ」「今から手掛ける石炭火力が、再生エネと比べてもうかる事業だとは捉えていない」などと語り、石炭火力事業が経済的に魅力が減少していることを指摘した。

 

 日本経済新聞が報道した。丸紅は、世界全体で1200万kW分の石炭火力発電事業を展開しており、日本企業としてはトップで、世界でも第11位の計画規模を有する事業者とされている。しかし、石炭火力はCO2排出量の多さで温暖化現象を加速させるリスクが高いことから、先進国市場を中心に、石炭火力事業の見直しが広がっている。

 

 そうした中で先月18日、同社は「石炭火力発電事業及び再生可能エネルギー発電事業に関する取組み方針」を公表、①新規石炭火力事業には原則取り組まない②石炭火力発電事業によるネット発電容量を2030年までに半減させる③再エネ発電を2023年までに倍増させるーーなどを宣言した。http://rief-jp.org/ct10/82894

 

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 国分社長はインタビューで、今回の方針転換について、「再エネの分野でイノベーションが起きている。これまでは簡単に既存電源にとって代われないという見方をしていた。世の中の流れが環境重視になるなか、方針をはっきり出すべきだと考えた」と語った。

 

 同時に、投資市場でESG評価が重視され、石炭火力を大量に抱えることの投資リスクを受けていたことも認めた。「投資家の動きは注視しており、ESG投資の潮流は承知している。今回の方針は電力分野でのビジネス環境の変化を捉えたものだ。トップダウンではなく、営業の現場が発案した」

 

 ただ、今回の方針はESGを重視した社会的配慮というよりも、ビジネスとしての評価の転換を強調した。「石炭火力には限界があり、成長分野は再生エネとガス火力発電だ。経営資源である人とカネを成長分野にいち早く移行させ、新たな分野で地位を築く。電力分野に限った話ではない」

 

 これまで電力事業が同社の稼ぎ頭となってきたのは事実。「石炭から再エネ」への転換は、収益力に影響を及ばさないのか、との質問に対しては、「成長が鈍化するのであれば方針は出さない。再生エネは発電コストが下がっている。今から手掛ける石炭火力が、再生エネと比べてもうかる事業だとは捉えていない」と、経済的にも石炭火力事業の魅力が低下しているとの認識を示した。

 

 また、「丸紅は英国で電力需要の調整ビジネスにも参入している。電力は単純に規模を積み増すだけの事業ではなくなった。余剰電力の蓄電ビジネスや、国内での新電力事業などからの収益貢献も大きくなってくるだろう」と述べ、発電だけではなく、電力マネジメント全体をにらんで事業展開していく考えを述べた。

 

 温暖化政策の強化によって、石炭など化石燃料事業の「座礁資産リスク」が高まり、欧米の金融機関を中心に、石炭火力事業への融資を見送る動きが広がっている。こうした金融の動きについては、「石炭火力の種類にもよるが、CO2の排出が多い案件は金融機関が消極的になったと感じている。こうした案件は中国やインドに多く、安値勝負になるため、争っても勝てないこともある」と語り、金融の圧力を認めた。

 

 しかし同社は膨大な既存の石炭火力発電所を抱えている。これらの石炭資産を2030年までに半減させるとの方針も示しており、すでに、数件の売却交渉を進めていることを明らかにした。「(同社の石炭火力事業は)独立系発電事業者(IPP)としての事業で、20~30年ほどの期間で契約を結ぶ。この契約終了に合わせて、他の電力事業に切り替えていく」としている。 

 

 だが、丸紅の新方針は、超々臨界圧発電方式(USC)で、かつ日本政府と案件実施国の国家政策(電力安定供給、貧困・雇用対策、経済成長策)に合致する場合は取組みを検討する場合もある、としており、必ずしも全面的な石炭火力からの撤退ではない。

 

 インドネシア西ジャワ州で建設を予定しているチレボン石炭火力発電所2号機の建設事業は、反対する現地の住民・NGOらが同事業への環境許認可の取り消しを求め、最高裁で争っている。こうした「紛争案件」についての対応等については、言及していない。http://rief-jp.org/ct4/82848

https://r.nikkei.com/article/DGKKZO36266190Z01C18A0TJ2000?type=my#AAAUgjIwMA